中国 中国会計税務レポ
[中国会計税務レポ] 企業関連者間取引の特別調整 – 特別納税調査調整と相互協議 (9)
中国の租税回避防止管理のガイドラインである『特別納税調整実施弁法(試行)』(国税発[2009]2号。以下「2号弁法」)の移転価格に関する規定のうち、2017年3月に公布された『特別納税調査調整および相互協議手続管理弁法に関する公告』(国家税務総局公告2017年第6号。以下「6号公告」)の企業が国外関連者との間で収受する費用に関する規定を紹介します。
1. 国外関連者へ支払う費用に関する規定
6号公告の公布以前、企業が国外関連者に支払う費用の移転価格に関する規定として『企業の国外関連者への費用支払いに係る企業所得税の問題に関する公告』(国家税務総局公告2015年第16号。以下16号公告)がありました。16号公告では、企業が国外関連者に支払う費用は独立企業原則に基づかなければならないとし、
- 機能・リスク・事業活動の実体のない国外関連者への支払い
- 関連者から提供を受ける、企業に直接または間接的に経済的利益をもたらすことのできない役務費用の支払い
- 無形資産の法律上の所有権を保有するだけの関連者に対する支払い
- ファイナンス、上場を目的として設立した国外の持株会社、融資会社にその活動等から生じる付随的な便益に関連して支払われるロイヤリティ―は税前控除(注1)できないとしています。
なお、16号公告は6号公告の公布により廃止されました。
(注1) 企業所得税の課税所得の計算上、原価・費用として収益から控除すること。日本の法人税の損金算入に相当する。
2. 無形資産取引
6号公告では、16号公告の無形資産に関する規定を基本的に踏襲していますが、BEPS(税源浸食と利益移転)行動計画の内容をより反映しています。また、6号公告では、特別納税調整は、独立企業原則に合致していない場合に行われることが強調されています。主な内容は以下の通りです。
- 無形資産の価値創出への貢献に応じた利益の配分の判定においては、その分析で考慮すべき項目を列挙し、無形資産とそのグループ内のその他業務の機能、リスクと資産の相互作用を十分に考慮すべきで、無形資産の法律上の所有権を保有するだけでその価値創出に貢献していない企業は無形資産の利益配分に関与してはならず、資金を拠出するのみの企業は資金コストに応じた合理的な報酬のみを受け取るべきであること。
- 取引されるロイヤリティがその無形資産を通してもたらす経済収益に合致しなければならないこと。
なお、16号公告では中国企業が国外の関連者に支払う場合のみを規定していましたが、6号公告では、「無形資産の使用権を譲渡、譲受することにより受取るまたは支払うロイヤリティについて」とあり、国外に投資する中国企業が増える中、中国企業が関連者企業から受取る対価についても管理することが明示されたものと考えられます。
3. 関連者間役務取引
関連者間役務取引の規定に関しても基本的に16号公告を踏まえていますが、無形資産取引と同様に支払いのみならず、受取る場合も含めて独立企業原則に合致していない場合に特別納税調整が行われることを強調しています。なお、独立企業原則に合致する関連役務取引は「受益性役務取引」であるとし、「受益性役務」とは役務の受入者に直接または間接の経済的利益を与え、かつ、非関連者が同様または類似の状況下で、購入または自ら実施することを望む役務活動であるとしています。この「受益性役務」の取引価格決定において考慮すべき要素を列挙するとともに、受入者毎に合理的な原価に基づいて確定する、もしくは合理的な配分基準により決めることを遵守すべき原則としています。また、企業関連者に支払う非受益性役務(注2)の対価は税前控除した全額について特別納税調整を実施できるとされています。
(注2) 16号公告の「企業に直接または間接的に経済的利益をもたらすことのできない役務費用」として掲げる6項目の内容とほぼ一致する。6号公告においては各項目について例を挙げてより詳細に説明がなされている。