中国

中国・深セン市の賃金支払条例修正案意見募集稿について

深セン市の賃金支払条例は2004年施行、現行の条例は2009年に一度修正発布されたものですが、昨年から今年にかけて数回の意見募集稿が発布されています。また、2021年5月27日には深セン市第7次人大常委会第一次会議で審議されたという報道(南方日報電子版5月28日)の文面が広東省政府ホームページに掲載されています。以下に内容を紹介します。7月25日時点で修正案は正式発布されておらず、下記修正案の内容は今後の会議での審議決定を経て正式に発布された段階で初めて施行となる点にご注意ください。

意見募集稿起草の説明

深セン市政府の意見募集稿掲載ページに添付された起草説明には今般の修正理由として、労働報酬の権利獲得と賃金支払の規範化に重要な役割を果たしてきた深セン市の賃金支払条例が、国際経済環境の複雑化、米中貿易摩擦の悪化、コロナ危機の中、各種市場主体が経営困難に直面していることから、労使双方の共同利益保護のバランス、労働関係の安定化、経済の安定・健全発展を図るために修正案の意見募集稿を作成した、とあり、労働者保護一辺倒ではなく、企業の立場を考慮した修正案であることが伺えます。

意見募集稿―修正案のポイント

「正常勤務時間賃金」条項の追加

第4条 正常勤務時間賃金についての規定について”正常勤務時間賃金を約定していないか約定が不明である場合、深セン市前年度の平均賃金若しくは実際支払った賃金の高い方を正常勤務時間賃金とするとしています。

初回の賃金支払い日

第11条 賃金支払周期が一か月である場合、元の規定には支払い周期最終日から7日以内とされていますが、修正版では“雇用者は初回の賃金支払い日に日割り換算で支払ってもよく、或いは、その次の支払日に合算して支払っても良い。具体的な支払い方法は雇用者より従業員との労働契約中に約定するものとする”としています。

労働契約解除時の賞与支払いについて

第14条に、労働契約解除時に月次・四半期・年度賞与等を従業員の実際勤務時間に換算して支払うとしていた規定について、“労働契約の約定或いは雇用者の規定制度に基づき支払う”と修正しています。

給与表の作成・保管等

第15条に規定される給与表の作成について、電子化等の実際に鑑み、修正案では“従業員より受領署名する”が削除されています。 また、給与表の保管期間を2020年に発布された《保障農民工賃金支払条例》の規定にあわせ、2年から3年に修正されています。

不定時勤務制の場合の、300%の法定祝日残業代の計算について

現行の第20条には、“雇用者が不定時勤務制の実施を手配している従業員が法定休暇に勤務する場合に、正常勤務時間賃金の300%で残業代を支払う” とありますが、これは《広東省賃金支払条例》に規定する、“人力資源主管部門の認可を経て不定時勤務制を実行する場合に本条例18条(残業代の条項)の規定を適用しない”という条項と矛盾するため、修正案では現行広東省規定と合わせ、”人力資源主管部門の認可を経て不定時勤務制を実行する場合、第18条の規定を適用しない”と修正するとしています。

最低賃金の規定について

原文第37条 “最低賃金基準を2年に1回調整する”を、《広東省実体経済下の企業コスト軽減方案の通知》(粤府[2017]14号)にて最低賃金基準の更新を3年に1回に調整したことに合わせ、“3年に1回調整する”に修正しています。

第41条 “市人民政府は異なる行政区域の具体的な状況に応じて異なる最低賃金を確定する”という条項を削除しています。