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中国・最新外資ネガティブリストとCEPA比較

対外貿易と外資導入を引き続き積極的に推進したい中国は、外商投資ネガティブリストをここ数年欠かさず更新しており、特にサービス領域の参入規制緩和を進めています。一方、香港企業には2003年以来CEPAの枠組みの中で貨物貿易の関税障壁の撤廃、サービス貿易では多くの領域で国民待遇が享受できる措置が継続して拡充されています。それぞれの参入規制を比較してより効果的なビジネスモデルを検討したいものです。

外資ネガティブリスト

中国大陸での外資企業の参入規制は2017年まで「外商投資産業指導目録」の制限類・禁止類に記載されていましたが、現在ではネガティブリストが採用されており、サービス領域の外資導入を引き続き促進したい中国政府によりこのところリストは毎年更新されています。行政手続き上もネガティブリスト外領域では商務部門による許認可が不要となり、直近の外商投資法に基づくシステム手続き簡素化も進められています。更に、国内でも特に規制緩和を先行して実施している自由貿易試験区のネガティブリストは一般地域とは分けて発布されています。

今回2020年6月に発布されたネガティブリストは、2018年12月、2019年6月発布に続くもので、参入規制列記項目数で一般地域は18年:48項、19年:40項、20年33項、自貿区18年45項、19年37項、20年30項と、一段と削減が見られます。また、以下の説明がなされています。

  1. 一部領域には参入規制の過渡期として期限が設定され、期限後は規制緩和或いは取消。
  2. 外国投資者は個人事業者/個人独資企業等としての設立登記は不可。
  3. 出資比率要求のある領域について外商投資パートナーシップ企業の設立登記は不可。
  4. 金融・文化領域で列記が無いものは現行の関連規定により実施。
  5. 香港・マカオ・台湾企業も外商投資であるが、CEPA等の経済貿易協議により緩和された制限や優遇措置がある

場合、その規定を適用。

CEPA

一方、サービス業種の香港企業に対する中国大陸進出の開放・規制措置は、CEPA(内地と香港の経済貿易緊密化協定)におけるサービス貿易協議で行われており、ネガティブリストとポジティブリストの両方の形式が採用されています。またサービス貿易のビジネスモデルはWTOによる次の分類に基づいています。

  1. クロスボーダー提供(香港から内地に直接サービス提供)
  2. 域外消費(内地消費者が香港で消費活動)
  3. 商業存在(香港企業が内地に会社を投資設立)
  4. 自然人流動(香港企業若しくはその従業員が内地でサービス提供)

上段の外商投資ネガティブリストを香港CEPAの「商業存在」上の制限性措置条項と比較することにより、香港CEPAにより制限緩和内容がある業種について香港からの投資が可能/有利であり、或いはクロスボーダー提供や自然人による商流はより香港企業・香港人の参入を可能としています。

香港の工業貿易署HPによると2004年以降香港の内地とのサービス貿易総額の年平均5%の成長に貢献し、2019年にも香港企業証明を1897社に発行した(物流、卸売り、航空運輸、HR、広告サービス等が多い)とのことであり、現在では全160部門のサービス貿易領域の内153部門で基本的に自由化を実現したとしており、最新の修正協議は今年6月1日から実施されています。

外商投資ネガティブリスト各領域

ネガティブリスト各項目のうち日系企業にも関連性の高いものを下記に説明します。

金融業は20年より別途関連業種規定に基づくとして列記は削除、証券、オプション、生命保険業務の19年版には21年より外資比率制限を撤廃とされていました。

自動車製造

2020年より商用車製造領域で外資比率制限が撤廃、2022年より乗用車製造外資比率制限を撤廃と、完成車製造合弁2社以内という制限を撤廃。専用車、新エネルギー自動車、商用車のほか、自動車完成車製造は中方の出資比率が50%以上。

交通運輸、倉庫、郵便業

⑫水上運輸は引き続き中方支配、国内船舶代理会社の外資出資制限は19年から撤廃。

⑬航空運輸も特に変更なく、公共航空運輸は中方支配且つ外資1社毎の出資比率25%まで、中国籍法定代表者。通用航空(専門業務)は中国籍法定代表者、その内農、林、漁業通用航空会社は合弁のみ、その他は中方支配。

⑮郵便業、国内クーリエ業務への投資は禁止。

運輸サービス(CEPA)

  • 公共航空貨運企業の設立は内地側支配、香港企業1社毎の出資比率は25%、法定代表者は中国籍。
  • 通用航空企業は合弁・合作のみ、法定代表者は中国籍。
  • 航空機リース会社の設立は国民待遇。

情報伝送、ソフトウェア、情報技術サービス

通信業:付加価値通信業務は外資比率50%まで。19年より電子商務のほかマルチメディア通信、電子メール等蓄積転送類、コールセンターの出資制限撤廃。

インターネットニュース・出版、視聴番組、文化(音楽を除く)経営、SNSの投資は依然として禁止。

通信サービス(CEPA)

通信業に関し一部の付加価値通信業務は香港出資50%まで。

基礎電信業務は内地出資支配。

リース及びビジネスサービス

一般地域

中国法律事務への投資を禁止、国内の弁護士事務所のパートナーになることはできない。

自由貿易試験区

中国法律事務への投資を禁止、国内の弁護士事務所のパートナーになることはできない。(外国弁護士事務所は代表機構の方式で中国に参入できるが、中国弁護士を雇用してはならず、法律サービスを提供してはならない。代表機構開設は中国司法行政部門の許可が必要。

法律サービス(CEPA)

代表機構は内地法律事務を取り扱ってはならず、中国弁護士を雇用してはならない。香港と内地の弁護士事務所の次のような共同経営による法律サービスが可能。

  1. 内地弁護士事務所が香港弁護士事務所の内地代表機構に弁護士を派遣し内地法律顧問業務を担当
  2. 内地弁護士事務所がすでに内地に代表機構を設立した香港弁護士事務所との共同経営協議に各自執務範囲、役割分担を約定し合作
  3. パートナーシップによる経営。司法行政主管部門の認可に基づく。香港弁護士事務所出資に最低比率の制限はない。

特許・商標代理サービス(CEPA)

特許・商標代理の専門サービスに対し国民待遇を実施する。

会議・展覧会サービス(CEPA)

クロスボーダー提供・決済の方式で、内地に会社を設立せずに提供することができる。

教育

一般・自貿区

入学前・普通高校と高等教育は中外合作且つ中方主導、中国国籍校長、董事会の中国人過半数。義務教育への投資は禁止。自貿区は職業訓練・教育機構への外資単独出資が可、中外合作による中国人学生対象の学校開設が可。

教育サービス(CEPA)

中国公民を主な生徒とする学校及びその他教育機構は合弁に限る。

非学歴中等・高等職業技能訓練機構の独資設立は可能。募集学生範囲は内地の職業訓練機構に準ずる。

衛生及び社会業務

医療機構は一般地区、自貿区とも合弁のみ可。

医療サービス(CEPA)

主に香港医療従事者資格による内地での期限付き従事等が可能。

医療及び歯科サービスの設立は国民待遇、省レベル衛生健康委員会による国家規定に基づく審査と登記。

獣医サービスは国民待遇。

遺伝子情報・血液最終・病理データ等に従事する業務は不可。

文化・体育及び娯楽

新聞機構の投資は禁止。図書、新聞、季刊、音楽映像製品と電子出版物の編集、出版、製作業務への投資は禁止。ラジオテレビ局・チャンネル・ネットワーク等各種業務への投資は禁止。番組制作経営、映画製作・発行、配給業務への投資は禁止。

文化財競売、文化財博物館への投資は禁止。演芸団体への投資は一般地区は禁止、自貿区は中方支配。

印刷と出版サービス(CEPA)

  1. 図書・新聞・季刊と電子出版物の編集・出版・製作は禁止、音楽映像製品の編集・出版業務は禁止。独資・合弁・合作で音楽映像製品製作業務に従事する企業の設立は可能。
  2. インターネット出版は不可。
  3. 出版物とその他印刷品(包装充填印刷品を除く)の印刷に従事する企業の出資比率は70%まで。

視聴サービス(CEPA)

映画製作・配給会社の設立は不可。内地主管部門の批准により中国国産映画の発行独資会社の設立は可能。

テレビラジオ製作会社・配給会社の設立は不可。

香港製作のテレビドラマ及び動画の参入制限はない。また、香港と内地の合作映画における人員数の制限を受けない。香港人の内地映画製作への参入制限はない。

娯楽(CEPA)

演出仲介機構或いは演芸団体への投資は広東省・上海市の主管部門より認可してクロスボーダー決済方式による演出活動か、若しくは文化と旅行部より認可して内地への投資を認める。演出団体への投資は合弁・合作とし、内地側支配とする。

香港投資者の内地でのゲーム設備販売を認める。

インターネット文化経営事業への投資は合弁・合作に限り、内地側支配とする。