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[まとめ] 貿易取引に係る外貨と税務4-国外企業からのサービス享受

前回は、中国現地法人が国外へサービスを提供した場合の外貨や税務について説明しましたが、今回は、中国現地法人が国外企業等からサービスを受ける場合の外貨取引や税金についてご紹介致します。サービス取引の内容としては、関連会社等の国外企業から受ける技術指導や技術供与、ソフトウェア利用等が考えられます。

■ 外貨管理規定

中国国外から受けるサービス取引の外貨送金は、外貨受領と同様に金額5万米ドルが基準となり二種類の手続が存在する。送金額が5万米ドル相当以下である場合には、特別な書類準備や手続を経ず、銀行への送金依頼を以て外貨送金を進めることが可能である。

(1)送金額が5万米ドル相当を超える場合の追加書類
国外への送金額が5万米ドル相当を超えるサービス取引の場合、金融機関は該当サービス取引の実体や送金額の正確性に対する審査を行う義務があるため、現地法人は銀行への送金依頼時に追加書類を提出しなければならない。追加提出資料はサービス取引内容に基づき以下のように定められている。

取引内容 提出書類
国際物流 運送発票、運送証憑、運送明細のいずれか一種類
技術供与、特許権利用 契約書や協議書等

(2)税務局への事前届出
現地法人が享受するサービス取引に係る国外送金額が5万米ドル相当を超える場合には、銀行での送金手続前に、サービス取引の提供者や送金額を現地法人の主管国家税務局へ申請した上で、税務局の受理印章が捺印された「サービス貿易等項目対外支払税務届出表」を銀行へ提出しなければならない。なお、当該届出手続は納税とは異なる行為であるため、国外企業の所得に対する税金源泉納付は別途実施する必要がある。

また、サービス取引の契約期間が長期間に渡り、同一の契約で5万米ドル相当を超える対価送金を複数回行う場合には、毎回の送金時に国家税務局から税務届出表への捺印を取得して銀行へ提出しなければならない。

■ 税務規定

(1)増値税(営業税)
 中国国内で提供されるサービス取引が増値税の課税対象となり、現地法人が国外企業から受けるサービス取引は増値税納付義務が基本的に発生すると考えられる。但し、以下のサービス取引は増値税が免税とされている。
(一)提供されるサービスが中国国外で全て消費される
(二)国外で使用される有形動産の賃貸借

2014年6月現在、多くのサービス取引が増値税の課税取引とされているが、一部のサービスは引き続き営業税の課税対象とされている。なお、営業税の課税基準は「中国国内の企業や個人へ提供されるサービス」とされているため、国外企業が中国現地法人へ提供するからサービスが営業税課税を課される場合には、例外規定がなく全て営業税納付義務が存在する。

(2)企業所得税
中国の税法規定では、サービス取引は役務発生地を以て企業所得税課税義務を判断することになり、中国国内で行われる技術譲渡や指導業務は企業所得税の課税対象とされる。但し、中国は日本や香港の諸外国地域と租税協定を締結しており、中国と租税協定を有する国や地域の企業が中国現地法人へ提供するサービス取引で以下に該当する場合には企業所得税納付を免除される。
(一)サービス提供地(技術指導先等)で固有の事務所や作業場を有していない
(二)中国国内でのサービス提供が年間で6ヵ月を超えない
※日本企業からのサービス取引提供の場合

例えば、日本の親会社が現地法人へ技術指導や顧問を提供する場合、当該サービスの提供期間が6ヵ月未満で、且つ現地に固有の作業現場を有しない状況においては、企業所得税を納付する必要はない。

【企業所得税免税手続】
中国現地法人へ提供されるサービスの所得に対して、企業所得税が免税となる条件を紹介したが、当該免税を採用する際には、サービス提供地の主管税務局へ免税適用の届出を行う必要がある。当該届出手続では一般的に以下の資料を準備する。
(一)(税務局指定様式の)申請表
(二)国外企業の管轄税務局が発行する納税居住者証明
(三)サービス取引提供に係る契約書 写し

香港では、税務局で納税居住者証明を取得することが可能であり、上記資料の準備も比較的簡単に進めることが可能であるが、日本企業の場合、中国税務局が求める納税居住者証明資料が存在しないため、税務局に個別対応を採ってもらう必要があり、資料収集を含めた企業所得税免税手続の執行には時間が掛かることが多い。

(3)税務届出
増値税や企業所得税の納税者はサービスを提供する中国国外の企業であるが、中国での納税申告を自身で実施することが難しいため、サービス対価を支払う中国企業が源泉徴収行う。なお、源泉徴収を行う中国現地法人は、国外企業と締結する契約内容や源泉徴収者の届出を税務局へ行う必要がある。

(4)税務局手続まとめ
中国現地法人が国外企業からサービスを享受する際には、中国税務当局への手続が複数存在するため、状況に応じた申請や届出を実施しなければならない。主な手続項目は以下のようである。
① サービス取引報告表の提出…サービス取引締結から30日以内に契約内容等を報告する
② 税金源泉徴収登記…源泉徴収義務の発生から30日以内に徴収者の登記を行う
③ 租税協定待遇享受届出…中国との租税協定により企業所得税が免税となる場合に行う
④ 対外支払税務届出…サービス取引の送金額が5万米ドル相当を超える際に実施