中国 中国法令ニュースまとめ
[まとめ] 貿易取引に係る外貨と税務3-国外企業へのサービス提供
前回は貨物の輸出入に係る外貨と税務について紹介してきましたが、今回は中国現地法人と国外企業のサービス取引における外貨や税務規定について紹介させて頂きます。貨物輸出入に係る外貨規定は2012年8月より大幅な手続簡素化が実施されていましたが、サービス取引に関しても2013年9月より新たな規定が執行されています。今回は、中国現地法人が、中国国外の企業や個人へサービスを提供することにより取得する外貨取扱や税務について整理致します。
外貨管理規定
中国現地法人が、中国国外企業や個人から役務提供の対価として外貨を受領する場合、金額が5万米ドル相当以下であれば、現地法人は銀行に対して契約書や請求書等のサービス取引の真実性を証明する書類を提出する必要はなく、外貨を受領することが認められる。但し、法律規定では、サービス取引の外貨取引関連証憑に対して5年間の保管が義務付けられているため、5万米ドル相当を超えない取引であっても、契約書や請求書を作成した上で適切に保管しなければならない。
(1)5万米ドル相当を超えるサービス取引の外貨受領
サービス取引の対価受領額が5万米ドル相当を超える場合、銀行による取引の真実性や合法性審査が行われる。審査資料として取引の契約書や請求書(発票)を銀行へ提出することが一般的であるが、サービス取引の内容によっては以下の書類が求められる。
取引内容 | 提出書類 |
---|---|
国際物流 | 運送発票、運送証憑、運送明細の何れか一種類 |
国外での工事請負 | 契約書、及び工事予算表か工事決算書 |
賠償金受領 | 原契約書、賠償協議書、賠償に関連する証明資料、或いは裁判所の判決書等 |
(2)外貨収入の国外留保
サービス取引に係る外貨収入は、前年度サービス取引外貨収入の50%を上限として、国外に留保することが認められる。但し、外貨収入の国外留保においては、外貨管理局への事前申請や定期的な入出金履歴提出義務等が課される。
税務規定
(1)企業所得税
中国現地法人が得る所得となるため、その他の所得と合わせて決算処理を行い、現地法人の利益総額に対して、企業所得税率(通常は25%)を乗じて企業所得税を納付する。なお、中国現地法人が国外から取得するサービス取引所得に対して、当該国外にて企業所得税(日本であれは「法人税」)を納付する場合には、中国における企業所得税より控除することが可能である。
(2)増値税(営業税)
中国の税法規定では、貨物の販売取引や加工業務は増値税、サービス提供や無形資産譲渡等の取引は営業税の課税範囲と定められている。但し、営業税から増値税への税体系改革が2012年1月より開始されており、現在は交通運輸業と一部現代サービス業に対して、営業税ではなく増値税が課されている。そのため、中国現地法人が提供するサービス取引がどちらの課税対象であるかを判断する必要がある。
1.営業税
従来通りの営業税課税取引と判断される場合、以下の条件を以て中国での課税義務を判断する。
① 顧問やコンサル役務の提供
中国現地法人が国外企業や個人へ役務を提供する際には全て営業税の課税対象となる。
② 無形資産譲渡
中国現地法人が有する特許や専有技術を国外企業や個人へ譲渡する場合、中国国外での取引と見做され非課税となる。
2.増値税
増値税の課税対象に属すると判断される場合には、国外企業や個人へのサービス取引に対して、営業税と比較して多くの分野で免税が認められるため、国外へサービス業務を提供する中国現地法人にとっては今回の税務改革が有利に働く可能性が考えられる。増値税が免税とされる国外企業や個人への主なサービス業務内容は以下のようである。
(一)国外で利用される有形資産の賃貸業務
(二)国外で実施される会議や展覧催事の手配業務
(三)貯蔵地点が国外となる倉庫役務
(四)国外貨物や事象が対象となる監査顧問業務
免税項目に該当する取引であっても、主管税務機関に対する事前の届出が義務付けられており、当該届出を経ない業務に関しては増値税免税が認められないため注意が必要である。なお、税務局への免税取引届出においては提出する主な資料は以下である。
(一)(税務局指定様式の)国際課税役務免税届出表
(二)国際役務契約書原本と写し
(三)役務地域が国外であることの証明書原本と写し
(四)役務受益者の所在地が国外であることを証明する書類
また、法律に基づく届出を行うこと合わせて、増値税の免税を享受する場合には留意点として以下の条件が課されている。中国現地法人が増値税免税を認められるためにも規定に基づいた適切な形態を以て契約締結や支払処理等を管理して下さい。
① 書面による契約締結
国外企業や個人へのサービス提供に当たっては、免税条件に該当することが明確に認識される契約書類を準備する。また、契約内容や提供サービスに変更がある場合には、主管税務機関に対して再度の届出手続を実施しなければならない。
② 正確な決算
現地法人の会計決算において、増値税免税取引と課税取引を明確に区分した上で、免税取引の原価に係る仕入増値税額は、増値税計算において控除を行わず、企業費用として処理することが必要である。
③ サービス取引対価の受領
増値税免税取引の収入に関しては、全額を国外から受領することが義務付けられているため、中国現地法人が享受するその他役務費用との相殺は避けることが賢明である。また、税務機関からの不要な疑いを避けるためにも、サービス提供先からの支払を原則として、関連会社等で契約を一括している場合には、個別契約への修正を検討されても宜しいかと考える。