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[まとめ] 貿易取引に係る外貨と税務2-貨物輸入取引
前回は貨物輸出に係る外貨受領や増値税還付を紹介致しましたが、今回は貨物輸入時の対外送金等について紹介させて頂きます。貨物輸入の対外送金に関しても、輸出取引と同様に2012年8月の規制緩和から手続が大幅に変更となっています。
外貨管理規定
輸入取引に係る外貨送金においては、貨物輸入額と対外支払額の一致が原則であり、企業での貨物輸入と外貨送金の金額に対して審査管理が行われている。当該審査管理は、2012年8月の規制緩和以降も継続されているが、金融機関を通じた管理方法が変更されたことにより、送金行為は非常に便利になっている。
(1)対外送金時の提出書類
輸入取引の真実性を確認するため、従来は銀行での対外送金時に「輸入契約書」「輸入貨物通関証明書」「請求書資料」の三種類を提出する必要があったが、現在は上記三種類のうち一つの書類を提出することで送金を実施することが可能である。これまでは、輸入貨物通関時の価額が送金額となっていたが、現在は輸入貨物通関証明書の提出義務が課されていないため、貨物輸入後の不具合確認等で支払額を調整する場合にも、外貨管理局等への手続を経ず、請求書資料を実体に基づき発行することで送金額を変更することが可能である。また、個人による携行、或いは郵便貨物として適切な通関を経ずに輸入した商品に関しても、請求書を作成することで対外送金が可能な状況となっている。
(2)外貨取引の管理方法
上記のように、輸入通関価額と異なる対外送金も実務的に可能となっていますが、貨物輸入取引に対しても、輸出取引と同様に輸入総額と対外送金額の総合的な監督が行われている。企業の貨物輸入額と対外支払額に大きな差異が生じる場合には、外貨管理局による立入調査対象が行われ、外貨取引が不適当と判断される状況では、企業区分が通常のA類からB類やC類に変更され、貨物輸入の対外送金手続に一定の制限が課される。
企業区分 | 規制内容 |
---|---|
A類企業 |
|
B類企業 |
※90日を超える輸出ユーザンス取引は執行が認められない |
C類企業 |
※90日を超える輸入ユーザンス取引は執行が認められない |
企業の外貨管理区分がB類やC類に認定される場合、対外送金時の追加資料提出や外貨管理局での登記といった煩雑な手続増加に加えて、三ヵ月以上の輸入延払が認められなくなる等の資金融通面での問題も発生するため、企業においては管理分類変更に繋がる外貨管理局の立入調査を避けることが重要になる。なお、合理的な理由に伴い貨物輸入通関額と対外送金額に大きな差額が発生する場合には、自主的に外貨管理局への報告を実施する方法を通じて、総量管理の差異化から生じる立入調査を回避する方法も認められている。
税務規定
貨物輸入に当たっては関税と輸入増値税が課されており、貨物輸出時の増値税免税や還付と比較すると比較的単純な納税行為を実施する。
(1)通関を通じない貨物輸入
上記の外貨管理規定の項目でも紹介したように、現在の対外送金手続においては、企業に対する外貨管理局分類がA類である場合、「輸入貨物通関証明書」提出義務がないため、個人による携行、或いは郵便貨物等の通関を経ない輸入貨物代金を送金することも可能になっている。但し、当該行為は密輸行為であり、輸入関税や増値税も未申告となり処罰の対象となるため、企業としての貨物輸入においては適切な通関手続を経ることには注意が必要である。
(2)輸入価額の査定
輸入価額に関しては、取引者双方で売買価格を自由に決定することが原則であり、輸入関税や増値税も当該輸入通関価額に一定の税率を乗じて計算される。但し、輸入売買取引の当事者が関連会社関係を有しており、輸入価額に対して不当な価格設定が行われ、輸入関税や増値税納付額が減少する情況にあると税関当局が判断する場合、企業は取引価額の合理性を説明する義務が課される。また、企業の説明を以ても輸入価額の正当性を税関が認めない際には、税関は同類貨物の輸入価額等を参考として課税価格を査定する権利を有しているため、売買価額が相対的に低く設定する中国への貨物輸出には合理的な根拠が必要となる。なお、課税価額は中国までの運賃や保険料を含む金額が基準となるため、FOB方式での輸入が行われる場合には修正が行われる。
(3)設備輸入に係る税制優遇
過去には一部の外資企業が輸入する生産設備の輸入増値税が免税とされている時期もあったが、2009年1月より施行された増値税法改定に伴い、輸入増値税の免税優遇政策は廃止されている。なお、従来は認められていなかった固定資産購入に係る仕入増値税の控除が可能とされたため、当該輸入設備の仕入増値税は売上時の税金と相殺することが可能であり、総合的な税務負担は不変となっている。但し、来料加工設備の税務負担増加や資金繰りを考慮する場合には、企業にとっては不利益を被る政策の変更ではあった。
輸入関税に関しては、外商投資指導産業目録にて奨励類に分類される業種に係る輸入設備である場合には、登記される投資総額の輸入分を限度として、輸入関税が免税となる優遇政策は継続されているので、現地法人の産業分類に留意することをお勧めする。