中国 華南ビジネス実務
[華南ビジネス] サービス業種開放に関する各地政策動向
中国の経済政策はこれまで製造業の発展と、貨物貿易促進において外資を多いに活用し、外資誘致と外資からのノウハウ移転を図ってきました。これと同じように、今後のGDPへの貢献、国内消費の拡大と、就業機会の増加を図るために、サービス業種の発展とサービス貿易の促進において、外資へのサービス業種開放政策を本格的に進めようとしています。昨今の国と地域の政策動向を紹介します。
一.国務院常務会議でのサービス貿易促進試行措置についての決定
2016年2月14日国務院常務会議において、貨物貿易と同様にサービス貿易でも市場を拡大し、新たな経済エンジンを導入して就業機会を増やすために、サービス業種の参入規制緩和に関する試行措置に関する以下の方針決定が報道されました。
(1)以降2年間、天津、上海、海南、深セン、杭州、武漢、広州、成都、蘇州、威海の10の省と市及び、ハルピン、(南京)江北、(重慶)两江、(貴州省)貴安、(西安)西咸の5つの国家級新区をサービス貿易改革発展試行地域とし、制度改革と参入開放を進めていく。
(2)試行地域において技術先進型サービス企業の企業所得税を15%に優遇し、且つ従業員への教育経費を給与総額の8%に基づき税前控除を認める。
(3)サービス貿易改革発展基金を導入し、中小サービス企業への融資サポートを行う。また、中国に必要な研究開発設計、省エネ、環境関連サービスに財政補助を与える。
(4)金融機構によるサプライチェーンへ提供する融資等の業務を奨励、試行地域で認定された技術先進型サービス企業に対しサービスアウトソーシング業務の保税管理を実施する。
二.北京での開放措置について
北京市は国務院よりの2015年5月5日《北京市サービス業拡大開放総合試行総体方案の認可回答》(国函[2015]81号)発布に基づき、向う3年間、科学技術、IT、文化教育、金融、ビジネス・旅行、健康医療サービス等6大重点領域において、率先してサービス業誘致と発展を図る方針です。上記文書及び2015年10月に発布された《国務院 北京市の行政審査と参入特別管理措置の暫定調整に関わる決定》(国発[2015]60号)と、2015年12月2日付政府HPに掲載された記者発表内容に基づいて各業種の外資参入条件緩和状況を紹介します。
[北京市サービス業拡大開放総合試行開放措置]
1.科学研究と技術サービス業
〈開放措置〉北京市においてサービスを提供する外資工程設計企業の審査時に、2件以上のプロジェクト実績(内1件は所在地国・地域)を有するという投資者の工程設計業績についての要求を取消す。
2.交通運輸・倉庫・郵政業
〈開放措置〉外商投資飛行機メンテナンス業務に従事する場合の中国企業メジャー出資という制限を取消す。
3.文化・体育・娯楽業
〈開放措置〉外商投資演出仲介機構の設立について、文化娯楽業の集中する特定区域に限り、独資の設立を認め、北京市の範囲内でサービスを提供する。
4.金融業:外商投資銀行
〈開放措置〉条件を満たす場合、外国の金融機構が外資独資の銀行を設立する、或は民営資本(非金融)と外国金融機構が共同で中外合資銀行を設立することを認める。国務院は新たな《外資銀行管理条例》を発布し2015年1月1日から施行、本条例により外資銀行に対し3つの緩和要件が規定された。また、2015年6月5日に銀監会は《外資銀行行政許可事項実施弁法》を修正発布した。北京市ではこの2件の規定に基づき権限範囲内で外商独資銀行、中外合資銀行の審査認可を取り扱う。
5.金融業:保険
〈開放措置〉外資の専門健康医療保険機構(外資出資比率は50%を超えない)の設立を認める。《外資保険公司管理条例》では、外資保険会社は中国保監会より批准すべきと規定しているため、この開放措置においても、認可権限は中国保監会にあり、派出機構である北京保監局ではない。
6.信用調査会社
〈開放措置〉これまで国務院が認可すると制限していた外資信用調査会社の設立を認めるとした。但し、香港マカオサービス提供者に試行開放する。
7.会計事務所
〈開放措置〉中国籍でなければならないとしているパートナーに、中国登録会計師資格を有する香港マカオ人を認めるとした。
8.人材仲介会社
〈開放措置〉外資比率49%まで、資本金30万米ドルとしている人材仲介会社の設立について、中関村に設立する場合、外資比率70%まで、最低登録資本金12.5万米ドルを認めるとした。
9.旅行会社
〈開放措置〉中国住民の出国旅行業務及び香港・マカオ・台湾旅行業務が制限されていたが、北京に設立された、条件を満たした中外合資旅行社が台湾地区以外の出国旅行業務に従事することを支持する。
2010年の旅行会社認可数量制限規定以来、北京地区には3社の中外合弁旅行会社が試行認可されており、現状では合わせて7社の合弁旅行会社がある。今回北京市旅遊委は《北京市中外合資旅行社の出国旅行業務展開試行業務管理弁法》(審査送付稿)をドラフトし2015年6月には既に国家旅遊局に申請している。北京市に設立した中外合資旅行社は、経営許可証取得後2年以上で、行政処罰等を受けていない前提で、北京旅遊発展委員会に書面で出国旅行業務を申請することができる。審査認可合格した旅行社は、批准文書に基づき、旅遊サービス品質保証金を120万元増加(元の20万元より140万元となる)積立ての上、出国旅行業務を認める経営許可証が差替発行される。
10.中外合資・合作医療機構
〈開放措置〉中外合弁・合作医療機構は国家衛生計生委の審査認可が必要、中外合弁、合作漢方医機構は中医薬管理局審査後、国家衛生計生委の審査認可が必要とされていた制限を、次第に審査権限を緩和し、申請を便利にする。
11.国外投資
〈開放措置〉商務部門による認可制を、個人及び企業による国外投資手続きを備案制を主とした管理方式を実行する。
三.広東省でのサービス業認可と各種ライセンス経営許可について
[CEPA広東協議アップデート]
2003年から中国大陸と香港/マカオとの間で貨物貿易及びサービス貿易、投資便利化等の分野で参入条件の緩和や手続きの簡素化、相互認証等の措置を進めてきた、経済貿易緊密化協定(CEPA)ですが、2015年より新たに広東省全域でサービス貿易開放を進める<広東協議>が実施されており、2015年11月にはこの更新版が2016年6月より施行されます。広東協議は実施の範囲を広東省のみで試行していますがこれを全国範囲に拡大し、ネガティブリストの制限措置削減を図っていくとのことです。更新情報を含め、ポジティブリスト及びネガティブリストに記載される開放・制限措置内容を北京の開放措置と比較すると以下の通りです。
1.銀行業
〈開放措置〉内地に設立した外資銀行の人民元業務従事の為に必要な最低開業年数要求を取消す。内地に設立した外資法人銀行について、内地商業銀行の業務範囲と統一する。
2.保険
〈開放措置〉内地保険公司が人民元の決済により香港の保険或は再保険業務を行う。香港の保険仲介会社が独資で広東省地域に設立できるとしていた地域制限を全国に拡大する。
3.法律事務所
〈開放措置〉内地法律事務所に香港の弁護士を派遣して香港関連或はクロスボーダー法律顧問業務を行うことができる。香港法律事務所に内地弁護士を派遣し内地法律顧問を担当することができる。香港弁護士事務所は広州、深セン、珠海で内地弁護士事務所と合営方式で経営できる。
4.会計事務所
〈開放措置〉香港永久居住者がパートナ―になれるが、支配権は内地居住者に帰属する。
5.文化及び娯楽
〈開放措置〉内地に30店舗以上店舗展開し、図書・新聞・雑誌等を含む、異なるブランド・サプライヤーの商品を経営する場合、独資・合弁での図書・新聞・雑誌小売りサービスを認める。広東省での娯楽場所設立を認める。ゲーム設備販売サービスの従事を認める。
6.人材仲介業務
〈開放措置〉ネガティブリスト管理。独資で設立でき、参入条件は国民待遇。
7.旅行会社
〈開放措置〉広東省において香港/マカオ独資旅行社を設立し、台湾を除く国外出国旅行業務が可能、但し5社に制限する。広東省外における独資旅行社による、香港への旅行業務が可能。
8.医療機構
〈開放措置〉独資・合弁・合作形式による医療機構の設置が認められる。広東省における独資の医療機構設立認可は広東省衛生計生委と広東省商務主管部門により国の規定に基づき審査認可と登記を行う。
[香港・マカオ企業の設立手続きが認可から備案手続きへ]
2015年3月1日より、香港・マカオ企業の広東省における企業設立申請手続きが簡素化されています。内地と香港/マカオ各協定のネガティブリストに制限的措置を定める分野及び電信業、文化領域、金融業を除き、設立認可申請手続きは不要となり、備案手続きを提出することとなっています。(2015年9月作成記事として本稿にて紹介しました)
[特殊ライセンスの事前/事後申請手続き]
工商登記制度改革に伴い、2014年より広東省の企業登記において、各種の特殊ライセンスについては、工商登記の前に申請取得すべきもの(13項目)と、登記後に申請取得すべきもの(108項目)に分けられ、リストが通知されています。
《広東省工商登記事前審査認可事項目録》及び《広東省工商登記事前審査を事後審査への改正事項目録》の通知
これにより、工商登記後に申請取得するものとされた項目については、会社設立時に関連の経営範囲を仮記載の上、リストに記載された申請条件を満たした上で、各業種の行政管理部門に経営許可証を申請して初めてその業務に従事することができます。
※各地の運用状況が異なる場合があります。各所在地にて再度ご確認ください。