中国 中国会計税務レポ
[中国会計税務レポ] 営改増全面展開後の増値税 – 税率 (3)
昨年5月1日の営業税を増値税に移行する税制改革「営改増」の全面実施後1年が経過し、この間に営改増後の増値税に関する公告や通知が数多く公布されています。今回は、増値税課税取引に適用される現行の税率について紹介します。
1. 増値税の現行法規
営改増の全面実施により、増値税の対象となる課税行為が格段に増えましたが、従来の増値税法(正式名称は中華人民共和国増値税暫行条例:国務院令第538号)およびその実施細則(財政部、国家税務総局令第50号、財政部令第65号)の全面改定は行われていません。よって、現行の増値税に関する基本的な規定は、2009年1月1日に改定施行された物品販売または加工・修理・部品交換労働サービスおよび物品の輸入を課税対象とする増値税暫行条例および実施細則と、2016年5月1日に施行したサービス・無形資産・不動産の販売の課税行為を課税対象とする「営業税から増値税に移行する税制改革の試行を全面的に推進する通知」(財税[2016]36号)の2つを以って成り立っています。
2. 増値税率
前回のレポートで紹介した通り、増値税率の簡素化が図られ、経過措置はあるものの、従来農産品や出版物など一部の物品販売に適用されていた13%の税率が廃止され、2017年7月1日以降は、増値税の税率は簡易方式による場合を除き(注1)、17%、11%、6%の3種類および物品の輸出に対する0%の計4種となっています。2017年7月1日現在の課税行為ごとの税率は表の通りです。
分類 | 課税行為 | 税率 | ||
---|---|---|---|---|
物品販売・輸入 | 以下を除く物品の有償販売または輸入 | 17% | ||
農産品(穀物を含む)、水道水、暖房、石油液化ガス、天然ガス、食用植物油、冷房、熱湯、ガス、民用石炭製品、食用塩、農機、飼料、農薬、農業用フィルム、化学肥料、メタンガス、ジメチルエーテル、図書、新聞、雑誌、音響製品、電子出版物 | 11% | |||
物品の輸出 | 0% | |||
加工・修理労務 | 加工、修理、部品交換サービスの有償提供 | 17% | ||
サービスの販売 | 交通運輸サービス | 陸運・水運・航空・パイプライン輸送サービス | 11% | |
郵政サービス | 普通郵政・特殊郵政・その他郵政サービス | 11% | ||
電信サービス | 基礎電信 | 11% | ||
付加価値電信 | 6% | |||
建築サービス | 工事・据付・修繕・装飾・その他建設サービス | 11% | ||
金融サービス | 貸付・有料金融・保険・金融商品販売サービス | 6% | ||
現代サービス | 開発及び技術 | 開発・専用技術サービスなど | 6% | |
情報技術 | ソフトウェア・情報システム・業務フロー管理サービスなど | 6% | ||
文化創意 | デザイン・知財・公告など | 6% | ||
物流補助 | 港湾・積降・倉庫・集配など | 6% | ||
リース | 有形動産リース | 17% | ||
不動産リース | 11% | |||
鑑定・コンサルティング | 6% | |||
放送映像 | 制作・発行・放映 | 6% | ||
ビジネスサポート | 企業管理・仲介・HR・保安 | 6% | ||
その他現代サービス | 6% | |||
生活サービス | 文化・体育 | 6% | ||
教育・医療 | 6% | |||
旅行・娯楽 | 6% | |||
飲食・宿泊 | 6% | |||
住民日常 | 6% | |||
その他生活サービス | 6% | |||
無形資産販売 | その他権益性 無形資産 | 技術・商標・著作権・のれん・その他の権益性無形資産の所有権または使用権の譲渡 | 6% | |
自然資源使用権 | 海域使用権・探鉱権・採鉱権・取水権・その他 | 6% | ||
土地使用権 | 11% | |||
不動産販売 | 建築物・構築物 | 11% |
(注1) 一般納税人であっても、営改増前に取得した不動産の販売・自己開発・リースには徴収率5%、建築業者が建築材料の提供を受けて行う工事(中国語表記は「清包工方式」)などの建築サービスは徴収率3%による簡易計算の選択適用が認められている。
3. 小規模納税人の税率
小規模納税人については簡易方式による税額計算が採用されており、その基本徴収率は3%ですが、不動産の販売・自己開発・リースには5%、個人が行う住宅のリースには1.5%の徴収率が適用されます。