シンガポール 会計事務所の選定

シンガポール・会計事務所の選び方

シンガポールの会計事務所の役割

シンガポールの会計事務所は、日本の会計事務所に比べて、幅広い業務を扱っている場合が多いです。対応が可能な業務とそうではない業務は、一般的に、以下の傾向があると思います。

対応可能、もしくは、得意な領域

  • カンパニーセクレタリー業務(会社秘書役業務):会社設立登記、登記情報の変更、法人登記閉鎖(会社秘書役とは、英連邦系の旧植民地国にみられる制度で、会社の総務事務担当の役職です)
  • 会計関連:経理記帳代行、法定決算書作成、関連したご相談への対応
  • 税務関連:法人税やGST(消費税)、個人所得税などの申告代行、関連したご相談への対応
  • 人事業務:給与計算代行、CPF申告代行、就労ビザ申請代行
  • バックオフィス業務の効率化、内部統制の整備・改善、事務作業に関するご相談
  • 会計監査業務、及び、監査サポート業務

対応していない、もしくは、苦手な領域

事務は得意であっても、ビジネス寄りの業務には対応できない、知見も乏しいことも少なくありません。

  • フィージビリティスタディを含む、市場調査や事業計画に関するご相談
  • 金融ライセンスの取得や、金融・知財契約関係などの法務業務
  • マーケティングやセールス拡大といった営業に関するご相談
  • 輸出入、物流など、モノに関するご相談

対応していない、苦手とされる領域でも、弊社のように対応できる事務所も存在します。

事務所の3つのタイプと特徴

コミュニケーション 価格 品質 ネットワーク
(1) 独立系日系会計事務所、及び、(2) 日本の会計事務所のシンガポール拠点 日本語によるサービス 接客が丁寧 レスポンスが早い 日本とシンガポールの両方の国の制度を踏まえたアドバイスなど。 価格面(ローカルに比べると価格が高い傾向) 専門性の高い領域の人材不足など。 他国に拠点がない場合がある。
(3) 大手・中堅国際会計事務所 中堅の国際会計事務所は、日本人の窓口担当が少ない。 価格が高い。 難度の高い領域の専門家を多く抱えている点。 世界中に拠点あり。
(4) ローカル会計事務所 日本人の常識、制度は全く通じないため、コミュニケーションロスが生じる可能性があります。 比較的価格が安い。 価格に応じたサービス品質であること、日本人の常識、制度は全く通じないため、コミュニケーションロスが生じる可能性があります。

(1) 独立系日系会計事務所、及び、(2) 日本の会計事務所のシンガポール拠点

前者(1)は、日本人がシンガポールまたはその他のアジア諸国にて創業し、日本人専門家が常駐し運営している日系の会計事務所を指します。弊社(Avic NAC)もこれに含まれます。後者(2)は、日本の会計事務所のシンガポール事務所(支店を含む)です。

長所

日本語によるサービス、接客が丁寧、レスポンスが早い、日本とシンガポールの両方の国の制度を踏まえたアドバイスなど。

短所

価格面(ローカルに比べると価格が高い傾向)、他国に拠点がない場合がある、専門性の高い領域の人材不足など。

弊社は、香港本部のNAC国際会計グループの傘下にあり、東南アジア、中国大陸、オセアニアにネットワークを有しています。

(3) 大手・中堅国際会計事務所

最大手のBig4やその他の中堅国際会計事務所です。それらのシンガポール拠点は、日本の監査法人からの海外駐在者など、多くの日本人専門家を抱えています。一方で、中堅の国際会計事務所は、日本人の窓口担当が少ないです。日本の上場会社で、監査法人をグループ内を統一するために、シンガポールにおいても同系列の監査法人にご依頼されるケースはよく見受けられます。

長所

世界中に拠点があり、難度の高い領域の専門家を多く抱えている点。

短所

価格が高い。

(4) ローカル会計事務所

シンガポールローカル資本の会計事務所で、日本人担当者がいない、とにかく費用を抑えたい場合には適しています。破格の低価格のケースもあれば、日系会計事務所よりも高い報酬水準の事務所もあります。

長所

比較的価格が安い。ローカルのパートナーやスタッフとのコミュニケーションに支障がない、複雑な会計処理や税務相談が生じない、相談は不要という場合には、適しています。

短所

価格に応じたサービス品質であること、日本人の常識、制度は全く通じないため、コミュニケーションロスが生じる可能性があります。

シンガポールの会計事務所の選び方

では、どのような視点でシンガポールの会計事務所を選んだらよいか、という点ですが、以下の観点がまずはあげられます。

  • 日本の親会社でご依頼されている会計事務所がBig4などの国際会計事務所で、そちらと統一されることが決まっている場合 
    ⇒ 「2.大手、中堅国際会計事務所」
  • 自社の会社規模が大きく、取引が複雑化している場合 
    ⇒ 「2.大手、中堅国際会計事務所」
    (例えば、移転価格税制面で、大規模な会社と、小規模な会社で、税務リスクが異なり、大規模な会社の移転価格税制も対応できる「2.大手、中堅国際会計事務所」に依頼される)

ただし、監査法人のみを「2.大手、中堅国際会計事務所」に依頼され、その他の業務や日常のアドバイスは、「1.独立系の日系会計事務所」、もしくは、「3.ローカル会計事務所」に依頼される、というケースも考えられます。

  • 期日管理、日常業務でのトラブル、疑問点の解決は、自力でできる、ただ、費用を抑えたい、という場合 
    ⇒ 「3.ローカル会計事務所」
  • 上記に該当しない場合 
    ⇒ 「1.独立系の日系会計事務所」

一方で、日本人デスクが、ローカルスタッフとのコミュニケーションが十分にできているかどうか、実際に、日本人デスクと会って話してみてフィーリングが合うかどうか、なども重要な視点です。