中国 M&A
[M&Aは今] (6)隣接業種との協業
卸売業は、商品の種類及び流通の機能によって自社の利益増大を図ることができる業種であり、逆に言えば同じものを同 じ機能で販売しても差別化できず、生き残りが難しいことは想像に難くありません。天然資源でソーシングが困難などの特殊な理由がある場合を除き、顧客に対 する交渉力は弱く、ポジションは低いのが通常です。また流通改革において小売企業が卸売企業を介さず、生産者から直接仕入れるといった状況があり、こう いった背景で企業間の合併や統合が進むのは自然の流れと言えるのではないでしょうか。卸売、小売を含む流通業種の企業再編は、大手企業、中小企業の案件に 関わらず昨今では非常に一般的となっています。
卸売業企業が合併や統合を通じて他社との差別化を図る方法の一つに、隣接業種との提携があります。製造企業同士では サプライチェーンの上流・下流と言ってもよいです。商品が一般消費品であるような卸売業の場合、小売企業との合併は事業基盤の強化につながり、他社との差 別化につながります。またお互いに商品をよく知っており、経営面では方針を一にしやすいということもあるでしょう。一方小売業にとっては、特に新規出店を 進めている段階では、商品仕入れルートの確保が急務です。今回は、卸売業の企業再編という観点から小売企業との提携を検討していますが、この点では、小売 企業にとってもメリットのある提携といえます。
合従連衡
先述の例は卸売企業の後継者問題などもあり、小売企業への会社譲渡という提携に至りますが、企業再編ではその他に、同業他社同士の統合ケースもあります。これは各社が株式を移転し、持ち株会社を設立するという方法です。統合のメリットとしては仕入れコストや本部コストの削減、信用力の拡大などがある上、各社はそのまま存続できるため、企業文化の融合や人事制度の統一といった問題が少ないことが特徴です。各社特徴のある社長がいれば、寄り集まって更にいい知恵が出てくるかもしれません。事業規模の拡大により上場の可能性も出てきます。このような同業他社同市の統合は合従連衡により業界内での生き残りを図るのが目的ですが、業界淘汰のピンチは発展のチャンスでもあると言えます。
企業再編時の企画、実施の上での課題には、企業文化の統一、社長やその他の役員人事をどうするか、再編後の持ち分比率、労働条件の違いなどがあります。
また、統合後のシナジー効果についても早期に発揮できるような仕組みづくりが必要となるでしょう。現代の企業にはコンピュータシステムが導入されているためシステム統合が必要となれば、コストがかかります。
統合する場合に、両社(或いは各社)の統合が業界で生き残るために必須であり、そのためには既存のシステムや企業文化の変更に柔軟に対応できるという強い意思と方向性が必要です。
提携交渉が合意に至った時、それは提携事業の始まりであり、早期に各種課題を解決しなければ提携が実ったと言えないことになります。
(本文 以上)