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[M&A] IPO調達額、世界2位に:Q4に追い上げ、7割増加

米会計事務所デロイト・トウシュ・トーマツによると、香港取引所(HKEX)での新規株式公開(IPO)による資金調達額が、今年は前年比68%増の約1,660億HKドル(約2兆2,500億円)に達する見通しだ。実施銘柄も84%増の104銘柄で過去最高を更新。第4四半期(10~12月)に追い上げ、調達額は世界2位となることが確実だ。来年も大型案件が控えており、調達額が最大2,100億HKドルに達すると同社は予測する。

2012年の香港のIPO市場は、実施銘柄62銘柄、調達額は約900億HKドルにとどまり、09年から3年連続維持していた世界首位から陥落。調査会社のディーロジックによると、今年のIPOによる調達額は10月末時点では約652億HKドルとなり、世界4位にとどまっていた。ただ第4四半期がIPOラッシュとなり、同期だけで昨年通年の調達額を超えた。中国本土の資産管理会社・中国信達資産管理や中国光大銀行など、調達額200億HKドル近い案件が相次いだことが奏功したとみられる。

世界の今年のIPO調達額は、ツイッターやヒルトン・ワールドワイド・ホールディングスなど大型案件が相次いだ米ニューヨーク証券取引所が首位。香港が2位になるとみられている。3位以下は◆英ロンドン証券取引所◆米ナスダック証券取引所◆東京証券取引所――と続く見通し。

「来年は最大2,100億HKドルに」

デロイトはこのほど、来年の香港市場でのIPOによる調達額が最大2,100億HKドルに達するとの予測を明らかにした。また、上場企業数については、85~100社になるとし、今年を最大で19社下回るとの見方を示した。調達額は今年と同水準の1,700億HKドルから最大2,100億HKドルに達するとみている。また来年1月からIPOを再開する本土市場については、来年中に200~230社が上場を果たすと予想する一方、本土のIPOは中小案件が主体となり、国有企業などの大型案件は香港に流れるとした。

デロイトの上場業務担当者は「本土住民の収入水準や生活の質が向上するにつれ、サービス業やミドルエンド、ローエンドの消費財を扱う企業が香港上場を目指す」と予想。また、本土での資金調達が難しい不動産業者が香港で裏口上場(既存上場企業を買収し資産を注入する方式)を図るケースも続きそうだとした。

来年の香港市場では◆ハチソン・ワンポア系のASワトソンズの分離(スピンオフ)上場(調達額:780億HKドル)◆電能実業(パワーアセッツ・ホールディングス)傘下の香港電力事業部門、香港電灯(ホンコン・エレクトリック)の分離上場(最大440億HKドル)◆本土食肉加工大手の双匯国際(468億HKドル)◆本土の広発銀行(350億HKドル)――など香港企業の分離上場や本土企業の大型案件が控えている。また日本企業ではカジュアル衣料ブランド「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングが上場するとの観測も報じられている。

アリババに来年5月上場説

今年の香港のIPO市場を沸かせたのは実施は見送られたものの、調達額が最大1,939億HKドルともみられている本土の電子商取引(EC)大手のアリババ・グループだった。30日付明報によると、同社が来年5月にも再び香港でのIPO実施に挑むとの観測が浮上している。

本土メディアもアリババが来年5月にも香港で上場を果たすと報じているほか、上場ではなく香港で社債を発行するとの観測もあるという。ただパートナシップ形式での上場を求めるアリババについては、香港証券当局などでも上場規則を改定するかどうかで大きく意見が分かれている。超大型IPO案件のアリババの動向には、来年も注目が集まる。(NNA.ASIA