中国 華南ビジネス実務
加工貿易企業の同一場所転換における税関手続き指南の解説
今回は、来料加工廠が移転せず法人化する場合の税関手続きについて、税関総署広東分署より発布された手続き指南に沿って紹介します。
中国語で「就地転型」とは、来料加工工場が移転せず同一の場所で法人に転換することを言います。以前は同一住所の登記重複は困難であったこと や、税関の手続き上、生産を一旦停止せざるを得なかった状況が見受けられましたが、加工貿易企業のグレードアップを促進する政策の一環として、加工工場の 法人化に対し政府関連機関も協力する環境となってきました。広東分署では加工工場が同一場所において法人化する場合の手続き指南を定め(試行)、管轄地域の税関で取扱うとしています。
目次
基本的な手続き手順
来料加工工場の同一場所での法人化において、大まかな手続き手順は以下の通りとなります。
(別シート図1(PDF)をご参照ください)
- 外国企業が経営単位(来料加工契約の中方当事者)に対し来料加工契約の終了を申し出る。
- 来料加工終了について商務主管部門(対外貿易経済合作局、深圳では貿易工業局)の審査認可を得る。
- 法人設立関連手続き(環境局、商務主管部門、工商登記、外貨・税務・財政局など)
- 管轄税関にて新法人の税関登記を行い、新法人の製造品目が奨励分類に該当し、設備輸入免税の優遇を受けることができる場合は減免税プロジェクト登記を行う。
- 新法人の商務主管部門での加工貿易認可と、管轄税関での加工貿易登記手続き
- 商務主管部門にて、元の加工貿易契約終止手続き
- 管轄税関にて設備輸入手続き(設備転廠或いは保税解除手続き)及び加工貿易契約(手冊或いは電子手冊)核銷手続き
- 税関及びその他の関連政府部門での登録抹消手続き(税務、財政、環境、工商など)
税関手続き
加工廠から法人に生産移管する時の税関手続きは、大きく次のように分けることができます。
- 新法人の税関登記とプロジェクト登記
- 設備の処理
- 保税材料の処理
- 来料加工契約の手冊核銷と、契約の終了手続き という手順となります。
(1)新法人の税関登記とプロジェクト登記
新法人の税関登記には、登記表、設立の認可文書・証書、定款、営業許可証、組織機構コード表、税務登記(国税・地税)証、銀行口座開設証明、通関専用印サンプルなどを提出します。製造製品以外を輸出入販売できる卸売りの経営範囲を持つ場合には、更に「対外貿易経営者備案登記表」の提出も必要とされています。
プロジェクト登記とは、外商投資産業指導目録という業種分類で奨励分類に属する場合に、設立認可申請時に商務部門から発行される奨励プロジェクト確認書を基に、奨励品目の生産設備の輸入時の免税優遇を得るためのもので、税関登記後、設備の輸入前に、税関宛てに免税証明書の申請を行います。
なお、外商投資プロジェクトの設備に対し免税の適用を除外して関税・増値税を徴収する設備リストはこの対象外となり、更に、08年5月1日以降認可されるプロジェクトにおいて関税を課税する設備については増値税のみ免税となりますのでご注意ください。
設備輸入の各種方法について、図2をご参照ください。
(図2)
新法人の製造品目が奨励分類に該当する場合、該当品目製造設備については、外商投資企業の総投資額の範囲内で、輸入免税優遇を得 ることができます。但し、免税を享受しない設備リスト上の商品に該当する場合、関税及び増値税が、並びに、08年5月1日以降関税を課税する商品リストに 該当する場合には増値税が課税されます。
(2)設備の処理:加工廠で使用されている、無償で輸入された設備の処理について
免税にて輸入された無償提供設備(中国語では「不作価設備」)に対する税関の監督管理期間は5年とされており、この期間を満了した設備は保税の解除手続きを経て移動してもよいことになっています。この際、関税・増値税の支払は不要です。
一方、輸入から5年に満たない場合は、A.海外に返却するか、B.税関の解除手続きを行って設備価値の残額に対する関税・増値税を支払った後移管するか、或いはC.保税のまま、設備転廠手続きを行うか、またはD.税関に廃棄申請をするか、のいずれかとなります。B、Cのケースを想定したフローは図2の通りです。
解除手続き後の移管は、法人が取得する設備価格に対する増値税発票の発行を自社で行うか或いは税務局で代理発行を申請します。保税のまま設備転廠する場合、(1)で減免税備案申請後、法人の輸入(転入)及び加工廠の輸出(転出)通関手続きを行います。
*解除手続きは法人設立手続きを待たず事前に行っておけば、設立手続き後すぐに移管手続きに入ることができ、よりスムーズに進めることができます。
① 新法人が奨励分類に属する場合に行う設備転廠
新法人が奨励分類に属する場合、設備を保税のまま移管することができます。保税による移
動であるため、設備転廠とも呼ばれます。転廠手続きは具体的には加工廠からの輸出と同時
に新法人への免税での輸入通関の書類手続きを行うものです。
先ず奨励分類プロジェクト登記には以下の資料を提出します。
- 《減免税プロジェクト備案申請表》コンピュータ入力表及び手書きの申請表
- 企業の設立認可証書、認可文書、定款、営業許可証、税関登記証
- 奨励プロジェクト確認書及び輸入設備リスト
- 企業印章、法定代表人署名登記表
- 税関の要求するその他の書類。
奨励分類プロジェクト登記後、輸入5年以内の設備を保税のまま移管したい時、以下の資料
を提出して免税証明を申請します。
- 《税関輸出入貨物徴免税証明申請表》
- 設備輸入契約及びインボイスコピー
- (来料加工廠の)不作価設備手冊
- 税関の要求するその他の書類
その後、設備転廠手続きには次の提出資料が必要となります。
- 設備転廠申請報告書と、設備リスト
- 設備転廠の輸出入通関表
- 加工廠が当初輸入(或いは転廠輸入)した際に税関が署名発行した、輸入貨物通関申告書及び関連の証憑コピー
- 加工廠の不作価設備手冊
- 輸入許可証管理商品の場合、当初輸入時の手続き資料
- 税関が必要とするその他の書類。
*保税のままで移管する前提には、奨励分類のほかにもう一つ、「加工貿易の無償提供設備(不
作価設備)」申請を行うことができるとされています。無償提供設備申請の条件は、①加工
後の製品を70%以上輸出する ②保税設備は非保税設備と物理的に分けて設置されている
(製造ラインを分け、輸出品の区別が明確であること)という条件が必要です。
②保税のままの移管ができない場合:保税解除手続き
法人が外商投資産業指導目録中の奨励分類に属さない場合には保税のまま移転することはできず、また、保税貨物の移動は認められていませんので、保税の解除手続きが必要です。特に、輸入から5年未満の設備には課税処理の上で、解除手続きを申請します。
先ず設備の課税処理手続きには以下の書類提出が必要です。
- 企業の申請報告書
- 輸入通関単
- 来料加工廠が元々輸入した際の、輸入通関報告単のコピー
- 関連の許可証(該当設備について)
- その他、税関が必要とする書類
その後、解除手続きに必要な書類は以下の通りです。
- 「不作価設備手冊」
- 来料加工廠が元々輸入した際の、輸入通関単
- 「設備解除監管申請表」(1式2部)
- 納税表
- その他税関が必要とする書類。
特に、1998年1月1日以降に輸入された設備の保税解除手続きについては、法人が引き続き使用するか否かについての説明書を添付することとなっています。法人が引き続き加工貿易に使用する場合には、通常中古設備輸入時に必要な「旧機電産品輸入許可証と検験検疫証書の申請は不要とされています。一方新法人に留保せず、国内で転売などする場合にはこれらの証書の取得が必要です。
(3)保税材料の処理
税関での保税材料の処理には2つの前提条件があります。
一つは、新法人の税関登記後3か月で来料加工廠の企業コードは取り消されてしまうために、来料加工廠に関する税関手続きは全てこの期間中に行わなければならないことです。設備と保税材料の移管は加工廠側税関手続きの一環であり、この後手冊の核銷と税関登記抹消という2つの手続きも控えているため、移管前に準備をよく行い、迅速に処理しなければなりません。
もう一つは、そうは言っても新法人の進料加工貿易を税関へ登記(「備案」)し、手冊を取得した上でなければ設備及び保税材料の移管は行えないということです。
なお、これまでは法人化の際の保税材料の保税移管=転廠は通常認められていませんでしたが、税関の広東分署では、保税材料の所有者が同一の外国企業である場合には、もとの加工廠の余剰材料を法人に転廠手続きにより移管することができるとしています。
ここでは、新法人が商務部主管部門に「加工貿易業務批准証」と、「生産能力証明書」を申請取得した後、税関への加工貿易契約登記(備案)手続きから説明します。
一般的な提出書類は以下の通りです。
(加工貿易ネットワーク企業の手続き書類は異なりますのでご注意ください)
税関への加工貿易契約登記
- 商務主管部門が発行した「加工貿易業務批准証」と、「加工貿易企業経営状況及び生産能力証明」のオリジナル。なお、「~生産能力証明」の有効期間中に必ず手続きすること。
- 新法人が外国企業と締結した、進料加工貿易の契約書或いは協議書
- 商務主管部門が企業の転換を批准した関連文書
- その他税関の必要とする書類。
加工貿易契約登記を行った後、保税材料の転廠による移管手続きを行います。
- 「加工貿易余剰材料結転申請表」(1式3部、以下「申請表」)により税関に旧契約(来料加工)手冊の使用を停止する申請を提出した上で、更に結転通関単を出力し、税関へ余剰材料結転申請を行います。同時に、以下の書類を提出します。
- 「加工貿易余剰材料結転連絡表」(1式2部、税関の検査確認を経て確認印が押されたもの)
- 企業の結転予定余剰材料リスト(商品コード、名称、数量を明記する)
- 転廠双方(転出者=加工廠、転入者=新法人)の手冊及び通関単
- 税関が必要とするその他の証憑或いは情報。
*転廠によって移管するもの以外の保税貨物については、旧契約(来料加工)手冊の使用停止申請を提出する前に、必ず通関手続き=輸出するか、或いは課税処理し国内貨物とする=を終了しておくことが必要です。
(4)来料加工契約の手冊核銷及び、税関登記抹消申請
新法人への移管が終了し、保税貨物の処理が全て終了したら、手冊を照合して閉鎖(「核銷」)し、税関の登記抹消を行います。
先ず核銷申請に必要な書類は以下の通りです。
- 企業の加工貿易手冊核銷申請についての書面情報
- 企業の加工貿易手冊及び分冊、続冊(もしある場合)
- 加工貿易専用の輸出入通関単
- 税関が必要とするその他の証憑や情報。
最後に、加工契約終了認可を基に、税関に登記の抹消を申請します。必要な資料は以下の通り。
- 商務主管部門が批准(認可)した、来料加工協議終止に関する文書
- 不作価設備手冊
- 輸出入通関単(設備)
- 設備の保税解除手続きを行った場合は、解除監管証明書
- この来料加工契約のもとで行った全ての手冊に関する「加工貿易合同核銷表」及び税関の関連部門により全ての手冊が既に核銷・終了済みを確認する旨の報告書
- 董事会決議書(一式2部)
- 税関が必要とするその他の証憑や情報。
以上が一連の手続きとなります。この手続き手順は広東分署の発布による「試行」文書であり、実際の手続き取扱は主管の税関となります。広東分署ではこの手続き手順を促進するとしていますが、各税関の現状に基づいた運用状況が異なるため、実務上は再度確認が必要です。
(以上)