中国 M&A
[M&Aは今] (7)合弁事業
日本企業の中国事業展開において、合弁会社の設立は現在でもよく検討される投資の形態の一つですが、これは主要な資本提携の一つです。
合弁の形式としては主に、中国国内企業と外国企業との合弁=「中外合弁」、そして外国企業同士で合弁して中国国 内に会社を設立する「外資合弁」があります。実際は外資合弁ですが、中国国内での登記手続きを簡便にし、運営管理拠点を設置する目的で外国企業同士が香港 やシンガポールなどで投資目的の合弁会社を設立した後、1社として中国国内に投資設立するケースもあり、登記上は外商独資企業とみなされます。
事業運営の役割分担
合弁事業のメリット・目的の一つに事業活動の役割分担があります。日本企業が高品質の商品や最先端の技術を有している一方で、中国国内市場販売のネットワークがあるとか、原材料の供給が可能である中国企業との製造企業合弁事業は最もよく耳にするケースです。中国内資企業との合弁により、現地の状況に即した管理運営や経営戦略を推進することができます。
外資合弁においては、大手メーカーの要請に応じて部品メーカー数社が経営資源(カネ・人・モノ)を出しあえば、1社では負担が大きい中国への進出が可能となります。
新規設立、増資引き受け、持ち分買取り
資本提携の方法としては、合弁で新規に設立することに加え、既存会社に出資する方法があります。増資を引き受ける場合、投入した資金は資本金として登録され、会社に入ることになる一方、株式の買い取りは、元の出資者に支払うこととなります。事業拡大のための提携であれば前者の方法が取られますし、株主自身の資金需要や事業撤退であれば持ち分の買い取りということになります。
日本側主体の事業展開が可能か
合弁の一方が自社主導で事業を展開したい場合は出資比率を高めるのが当然です。しかし、中外合弁事業で、日本企業が51%出資で中外合弁企業を設立していても、重要事項については董事会での全員一致決議が必要と元々合弁契約や定款に取り決めてあり、中国側の同意が中々得られず思うように事業展開できないことがあります。
中国では対外開放が進むに伴い、業種によって外資出資が制限されてきた分野でも序々に制限緩和に向かっており、これまでマイナー出資の合弁形態で行ってきた事業を日本側の主導でさらに展開したいような場合、合弁相手の持ち分を買い取って外資100%とすることもあります。このような場合もちろん合弁相手の同意が必要で、合弁契約の途中終了として合弁契約に応じた賠償などの交渉、また今後合弁相手との関係をどのように保つかなどを考慮する必要があります。
中外合弁契約では出資比率に応じて利益を分配すると記載されており、逆に出資比率を小さくして損失の場合の影響を少なくしたいと考える場合もあります。
また一般的には合弁パートナーの数は少ない方が意思決定がスムーズかつスピーディに行えることが予想されます。
合弁解消
一方、合弁事業の解消ですが、業績悪化や市場構造の変動により事業の継続が困難になった場合には、会社の解散か或いは持ち分の譲渡により合弁事業の解消を検討することになります。
中外合弁の関連規定には、合弁の一方が株式持ち分を譲渡する場合、合弁相手が優先購買権を有するとあり、第三者に譲渡する場合は合弁相手への譲渡条件より優遇されてはならないとあります。
持ち分譲渡の場合の手続きとしては、董事会などで合弁相手の同意を得た上、元の審査認可機関である対外経済貿易部門の認可を受け、工商行政管理部門などで登記変更手続きを行うことになります。
(以上)