香港 利得税
香港における株式持分の処分に係るオンショア所得非課税明確化制度
目次
株式持分処分益の税務上の取扱い
香港では、資本性の所得(キャピタルゲイン)に課税しない簡素で競争力のある税制が採用されている。これに従い、香港で生じた、または香港から派生する株式持分の処分から稼得される所得もしくは利益(オンショア処分益)は、香港における利得税(=法人所得税)の課税対象とはならない。現行の税制では、オンショア処分益の性質は、主として「バッジ・オブ・トレード(Badges of Trade)」アプローチ(分析)に基づき、対象となる株式持分の、類似取引の発生頻度、保有期間、保有比率、並びに購入及び売却に至った理由等の、案件毎に関連する事実や状況が勘案され、決定される。当該「バッジ・オブ・トレード」分析の結果、オンショア処分益が本質的に資本性(キャピタルネイチャー)であると判断された場合には、利得税の課税対象とはならないが、これが本質的に営業性(レベニューネイチャー)であると判断された場合には、利得税の課税対象となる。同様に、資本性のオンショア処分損が資本性の損失(キャピタルロス)である場合は、税務上損金算入不可となるが、これが営業性である場合は、税務上損金算入が可能である。
税務(株式持分の処分に係るオンショア所得非課税)明確化制度(以下「TCES制度」)
ビジネスにおける事業拡大や事業再編活動の過程では、株式持分の取得及び処分が頻繁に実施される。財務司司長は、2023/24年度政府予算演説の中で、香港政府が、資本性のオンショア処分益が課税対象とならない確実性をより明確にするための、明確化制度案を提出すると発表した。2023年税務(改正)(税制適格持分保有者による処分益)条例(「修正条例」)は、株式持分の処分に係るオンショア所得非課税明確化制度の規定を目的として、2023年12月15日に制定された。当該TCES制度の下では、特定の条件を満たしている場合、税制適格投資企業によって稼得されたオンショア処分益は、本質的に資本性とみなされ、現行の「バッジ・オブ・トレード」分析を経る必要はなく、利得税の課税対象とはならない。
当該TCES制度は、関連する処分が2024年1月1日以降に発生し、関連する利益が2023年4月1日以降に始まる税査定年度の基準期間中に発生することを条件として、オンショア処分益に適用される。
当該TCES制度の適用は強制ではなく、納税者が適用するか否かを選択することが可能である。投資企業が当該TCES制度を選択しない、または何らかの理由により除外されているために、当該TCES制度がオンショア処分益に適用されない場合、対象となるオンショア処分益が本質的に資本性であるか営業性であるかは、引続き「バッジ・オブ・トレード」分析に基づいて判断され、決定される。
株式持分の処分によるオンショア損失に関しても、当該TCES制度は、その損失の性質を決定するために「バッジ・オブ・トレード」分析を適用する既存の税制に影響を与えることはない。
TCES制度の適格基準
基本規定
投資企業が2024年1月1日以降に投資先企業の株式持分を処分し、2023年4月1日以降に始まる税査定年度の基準期間中、関連する所得もしくは利益が香港で生じている、または香港から派生している場合は、当該TCES制度に基づく例外事項の対象となり、以下の税制適格基準が満たされている場合、本質的に資本性とみなされ、利得税の課税対象とはならない:
- 投資企業は、税制適格投資企業でなければならない;
- 処分の対象となる事項は、税制適格投資先企業の税制適格株式持分でなければならない; 並びに
- 対象となる株式持分の、対象となる処分に対し株式持分保有条件が満たされるか、または長期保有の残存株式持分の例外条件(すなわち、トランシェでの処分)が満たされている。
当該TCES制度は、香港で生じる、または香港から派生する処分益(すなわち、オンショア処分益)にのみ適用される。これが、たとえ特定の国外源泉所得が税務条例(Inland Revenue Ordinance、以下「IRO」)の第15I条(1)に基づいて、香港で生じた、または香港から派生した受領と見なされていたとしても、IROの第15条H(1)で定義されている特定の外国源泉(オフショア受動的)所得をカバーしない。言い換えれば、オフショア受動的所得非課税制度に基づいて、香港に源泉があるとみなされる株式持分の売却から稼得されるオフショア処分益は、当該TCES制度の対象とはならない。
税制適格投資企業
投資企業は法人(自然人を除く)、または個別の財務諸表を作成する取決めであるパートナーシップ、信託並びにファンド等でなければならない。
しかしながら、当該TCES制度は、保険会社である投資企業には適用されない。詳細については、例外事項の例外投資企業を参照頂きたい。
投資企業に対する居住要件や上場要件はない。従って、上述されている例外投資企業を除いて、当該TCES制度は、香港居住者であるか非居住者であるか、香港内で登記もしくは設立、または香港外で登記もしくは設立されたか否か、さらに上場企業か非上場企業かに関係なく、すべての投資企業に適用される。
税制適格株式持分
投資先企業の株式持分とは、投資先企業の利益、資本または準備金に対する権利を有する株式持分を意味し、適用される会計原則に基づいて、投資先企業の帳簿上、資本として会計処理される。従って、当該TCES制度は、株式持分が投資先企業の利益、資本または準備金に対する権利を有しており、かつ投資先企業の観点から、適用される会計原則に基づいて資本として取り扱われることを前提として、普通株式、優先株式並びにパートナーシップ持分等のさまざまな形態の株式持分の処分から生じるオンショア処分益に対し適用される。
適用される会計原則とは通常、企業が財務諸表を作成する際に採用する必要がある会計基準を指す。投資先企業の観点より、金融商品を資本性金融商品として分類すべきか、金融負債として分類すべきかを決定する際、香港会計基準第32号並びに国際会計基準第32号が、その分類方法に関する詳細なガイダンスを提供している。投資先企業が財務諸表を作成する際に、特定の会計基準に準拠する必要が無い場合、適用される会計原則は国際財務報告基準でなければならない。
しかしながら、本制度は以下の株式持分には適用されない:
- 税務上のトレーディング目的の株式持分; または
- 不動産取引、不動産開発または不動産保有に従事し、例外条件を満たさない投資先企業(例外企業)の非上場株式持分。
詳細については、例外株式持分 – トレーディング目的の株式持分及び例外株式持分 – 不動産関連企業の非上場持分を参照頂きたい。
税制適格投資先企業
投資企業の要件と同様に、投資先企業も法人(自然人を除く)、または個別の財務諸表を作成する取決めであるパートナーシップ、信託並びにファンド等である必要がある。
上述の通り、当該TCES制度は、不動産関連事業を営む、例外条件を満たさない投資先企業(例外企業)の非上場株式持分には適用されない。その他、当該TCES制度は、香港居住者であるか非居住者であるか、香港内で登記もしくは設立、または香港外で登記もしくは設立されたか否か、さらに上場企業か非上場企業かに関係なく、すべての投資先企業に適用される。
株式持分保有条件
特定の例外を除いて、当該TCES制度は、投資先企業の株式持分の保有期間及び保有比率に関連する株式持分保有条件が満たされる場合、オンショア処分益に適用される。保有期間のしきい値は24ヶ月、保有比率のしきい値は15%と規定している。投資企業が投資先企業の株式持分の処分から稼得したオンショア処分益に対して、以下の条件が満たされる場合、株式持分保有条件が満たされる:
- 投資企業が投資先企業の株式持分の処分日の直前までの24ヶ月間(参考期間)、連続して当該株式持分を保有しており; かつ
- その株式持分保有は単独で、または当該投資企業が参考期間を通じて保有していたその他特定の当該投資先企業の株式持分と合わせて、少なくとも当該投資先企業の合計の15%以上を占める場合(税制適格株式持分)。
グループベースでの税制適格株式持分の測定
当該TCES制度は、グループベースで税制適格株式持分を測定可能とすることにより、株式持分保有条件に柔軟性をもたらしている。参考期間を通じて、投資企業が保有していた株式持分が、投資先企業の税制適格株式持分を構成しない場合(すなわち、投資企業だけが投資先企業の株式持分の15%未満を保有している場合)、参考期間を通じて、投資企業並びに密接に関連する企業が保有している株式持分が、合計して投資先企業の税制適格株式持分を構成するのであれば、依然として株式持分保有条件を満たすことが可能である。
グループベースでの測定で15%の保有しきい値が満たされているかどうかを判断する際には、参照期間を通じて、密接に関連する企業が直接保有している投資先企業の株式持分が集計で考慮される。
「密接に関連する企業」の意味
以下の場合、ある企業は別の企業と密接に関連する企業である:
- 一方が他方を支配している; または
- 双方とも同じ企業の支配下にある。
以下の場合、ある企業(企業A)は別の企業(企業B)を支配している:
- 企業Aは、企業Bに対するもしくは関連する50%を超える受益権を、直接的あるいは間接的に保有している; または
- 企業Aは、直接的あるいは間接的に、企業Bにおけるもしくは企業Bに関連する50%を超える議決権を行使する、またはその行使をコントロールする権利を有する。
直接的な受益権
企業Aの企業Bに対する直接的な受益権の範囲は、以下の通り決定される:
- 企業Bが信託財産の受託者ではない法人の場合 – 企業Aが保有する法人の発行済株式資本(ただし記載されていること)の比率;
- 企業Bが信託財産の受託者ではないパートナーシップである場合 – 企業Aが受け取る権利のあるパートナーシップの収入の比率;
- 企業Bが信託財産の受託者である場合 – 信託財産の価値に対する企業Aの持分の比率; または
- 企業Bが法人、パートナーシップもしくは信託財産の受託者ではない、ある企業である場合、その企業に対する企業Aの持分の比率。
間接的な受益権
企業Aが別の企業(中間介在企業)を通じて、企業Bに対して間接的な受益権を有するか、または間接的に企業Bにおける議決権の行使もしくはその行使をコントロールする権利を有する場合、企業Aの企業Bにおける間接的な受益権あるいは議決権の範囲は、以下の通り決定される:
- 中間介在企業が1つある場合 – 中間介在企業における企業Aの受益権もしくは議決権の比率と、企業Bにおける中間介在企業の受益権あるいは議決権の比率の2つを乗じて得られる比率; または
- 一連の2つ以上の中間介在企業がある場合 – 一連の最初の中間介在企業における企業Aの受益権もしくは議決権の比率に、次の中間介在企業における一連の各中間介在企業(最後の中間介在企業を除く)の受益権あるいは議決権の比率と、企業Bにおける最後の中間介在企業の受益権もしくは議決権の比率を乗じて得られる比率。
例えば、企業Aが、企業Bの発行済み株式資本の70%を保有する中間介在企業の発行済み株式資本の80%を保有している場合、企業Aは、企業Bの受益権の56%(すなわち、80% x 70% = 56%)を間接的に保有しているとみなされる。この状況においては、企業Bは企業Aと密接に関連する企業となる。
例えば、企業Aと企業Bとの間に複数の中間介在企業が存在する場合、企業Aは中間介在企業Cの発行済み株式資本の80%を保有し、中間介在企業Cは中間介在企業Dの発行済み株式資本の70%の保有しており、中間介在企業Dは企業Bの発行済株式資本の85%を所有している。企業Aは、企業Bの受益権の47.6%を間接的に保有しているとみなされる(すなわち、80% x 70% x 85% = 47.6%)。この状況においては、企業Bは企業Aと密接に関連する企業とはならない。
先入先出方式での処分
投資企業もしくは投資企業と密接に関連する企業が、異なる機会に同じ投資先企業の持分を取得している場合に、特定の処分が株式持分保有条件を満たしているか否かを判断する際、対象となる持分を取得した順序(すなわち、先入先出方式)で処分されたものとみなされることとなる。
貸株契約に基づく株式持分
投資企業もしくは投資企業と密接に関連する企業が、投資先企業の株式持分に対する法定の権益が、別の企業に譲渡される(印紙税条例(第117章)の第19条(16)に規定されている意味における)貸株契約の貸し手である場合、投資企業もしくはその密接に関連する企業は、その借入期間中、投資先企業の株式持分保有者として扱われる。
株式持分保有条件の例外 – 長期保有の残存株式持分(トランシェでの処分)
投資企業は、長期保有する株式持分をトランシェで(区分して)処分することが可能である。株式持分のトランシェでの処分後、投資企業の投資先企業に対する株式保有が15%のしきい値を下回る可能性があり、その後の長期保有の株式持分の残り(長期保有の残存株式持分)の処分の際、株式保有条件が満たされなくなる可能性がある。こうした状況に対処するために、当該TCES制度は、株式持分保有条件の例外を設けており、以下の条件が満たされる場合、長期保有の残存株式持分の処分から生じるオンショア処分益は、本質的に資本性と見なされ、利得税の課税対象とはならないとされている。
- 投資企業の対象となる株式持分(すなわち、長期保有の残存株式持分)を処分する前に、投資企業は、投資先企業の一定の株式持分を保有しており、その一部は投資企業によって処分された(早期処分)場合で;
- 当該TCES制度は、早期処分における株式持分保有条件が満たされており、対象となる株式持分が税制適格株式持分の一部を構成していることを前提として、早期処分から生じるオンショア処分益に適用される(言い換えると、対象となる株式持分が早期処分時に全部処分されていた場合に、株式持分保有条件は満たされていた事実に基づき、残りの対象となる株式持分は、当該TCES制度の対象となると見なされる)場合であり; かつ、
- 残りの対象となる株式持分の処分は、以前の処分から起算し24ヶ月以内に実施される場合(24ヶ月間の期限)。
複数のトランシェで早期処分が実施された場合、24ヶ月間の期限は、直前の処分の日付に基づいて計算される。言い換えると、税制適格投資企業が、最後に株式持分保有条件を満たしていた直前の処分から24ヶ月以内に処分を実施した場合、長期保有の残存株式持分の処分から生じるオフショア処分益は、当該TCES制度の対象となる。
例外事項
例外投資企業
投資から収益を稼得することが保険会社の中核的な事業活動の一部を構成していることより、保険会社として事業を営む企業による株式持分の処分益は、本質的に営業性とみなされ、保有期間や保有比率に関係なく利得税の課税対象となる。従い、当該TCES制度は保険会社である投資企業が処分する株式持分には適用されない。
IRO第4部第11分部第1次分部の下、税査定年度中の課税所得の存在が確認されている場合、その投資企業は保険会社である。関連規定に従って、利得税の課税対象とならない企業(保険会社の子会社等)は、当該TCES制度から除外されない。
例外株式持分 – トレーディング目的の株式持分
トレーディング目的の株式持分は、資本性の資産(キャピタルアセット)ではない。原則として、当該TCES制度は、事業所得が課税対象である既存の税務上の原則に影響を与えるものではない。従い、当該TCES制度は、トレーディング目的の株式持分には適用されない。投資企業もしくは投資企業と密接に関連する企業(総称し「持株会社」)が保有する株式持分が、トレーディング目的の株式持分として見なされる場合は、株式持分保有条件を満たすか否かを判断する目的において、考慮されない。
持株会社が保有する株式持分(特定株式持分)は、特定株式持分に起因する未実現公正価値損益、またはその価値の減損引当金が、税務上の税計算に含まれている場合に、トレーディング目的の株式持分として見なされる。特定株式持分が他の株式持分とともに、投資企業によって同時に取得された場合に、当該特定株式持分と同時に取得された他の株式持分に係る未実現公正価値損益もしくは価額の減損引当金が生じる、またはその処分に起因する損益が発生し、税務上の税計算に含まれている場合は、当該特定株式持分は、トレーディング目的の株式持分として見なされる。
上述の段落に続けて、ある合計額が以下に基づいて、持株会社の課税所得の計算に含まれている場合、その合計額は税務上の税計算に含まれている:
- IRO第70条に基づいて、持株会社に対して行われた最終的かつ確定的な税査定; または
- 持株会社に対して発行された損失計算書。
以下の状況の場合、IROの第70条に基づき、税査定が最終的かつ決定的なものとなる:
- IRO第1部に基づく税査定に対して、有効な異議申立てあるいは上訴が提出されていない(すなわち、税査定上では関連する公正価値損益もしくは処分損益が税計算に含まれているが、これに対する有効な異議申立てまたは上訴が提出されていない);
- 税査定に対する上訴が、IRO第68条(1A)(a)に基づいて取り下げられたか、IRO第68条(2B)に基づいて却下された場合;
- 課税所得額がIRO第64条(3)に基づいて合意されている(つまり、納税者が提出した異議申立てを受けた後、査定官と納税者が課税所得について合意している); または
- 関連する課税所得は、異議申立てもしくは上訴により決定される。
用途変更
特定株式持分について、トレーディング目的の株式持分から資本性の資産への用途変更が合った場合(すなわち、特定株式持分がトレーディング目的以外に充当された場合)、その充当された株式持分が公開市場で売却された場合に実現したであろう金額が、IRO第15BA条(2)に基づく受領として見なされることを前提として、特定株式持分は、トレーディング目的の株式持分とは見なされなくなる。当該TCES制度は、処分日以降に関連する株式持分保有条件が満たされる場合には、特定株式持分のその後の処分にも適用される。
「無考慮期間」の決定
当該TCES制度の目的の上では、株式持分保有条件を満たしているかどうかを判断する際に、トレーディング目的の株式持分と見なされる期間(無考慮期間)中、すなわち、適格株式持分を構成しない期間においては、株式持分は考慮されない。
特定株式持分に関連する公正価値の未実現損益もしくは減損引当金が、ある税査定年度における税務上、税計算に含まれている場合、無考慮期間は当該税査定年度の基準期間の初日から開始する。他の株式持分と同時に取得された特定株式持分については、その他の株式持分に係る公正価値の未実現損益もしくは減損引当金、または処分損益が、ある税査定年度における税務上、税計算に含まれている場合、無考慮期間は当該税査定年度の基準期間の初日から開始し、その他の株式持分が実際に処分される際には、その処分された日から開始する。
どちらの場合も、無考慮期間は、該当する場合、関連する株式持分が非トレーディング目的に充当される日に終了する。
例外株式持分 – 不動産関連企業の非上場持分
当該TCES制度は、不動産取引、不動産開発または不動産保有事業に従事する、投資先企業の非上場株式には適用されない。不動産をトレーディング目的の株式持分として保有する企業が、中間持株会社や別の企業を通じて取得もしくは保有するよう事前に取り決めた後、当該企業の株式持分を処分することで、その処分益が当該TCES制度に基づいて非課税であると主張する、潜在的な制度の濫用を回避するためのものである。
「不動産」の定義
「不動産」とは、インフラストラクチャーを除く以下を意味する:
- 土地(水で覆われているかどうかに関係なく);
- 土地内もしくは土地上の不動産、権利、権益または地役権; 並びに
- 土地に取り付けられている物件、あるいは土地に取り付けられている物件に永久に固定されているもの。
「インフラストラクチャー」という用語は、公共の利益のためにサービスを提供もしくは配布する、公的あるいは私有の施設を意味し、上下水道、エネルギー、燃料、輸送または通信施設が含まれる。
不動産関連会社の上場株式の譲渡に関する事項
不動産関連事業を営む投資先企業の非上場株式の処分のみが、当該TCES制度の例外対象となる。不動産関連事業に従事する投資先企業の上場株式の処分は、上場企業を通じて潜在的な租税回避濫用の取り決めが行われる可能性が非常に低いため、当該TCES制度の例外対象はならない。
不動産取引
投資先企業が、関連する基準期間(すなわち、処分が発生する税査定年度の投資先企業の基準期間)に不動産取引事業に従事している場合、例外企業となる。企業が香港またはその他の場所で、不動産の取得及び売却の事業を営んでいる場合、その不動産の取得及び売却が不動産開発(すなわち、建物の建設)事業に付随するものではない限り、不動産取引の事業に従事していることとなる。この例外は、不動産開発の定義との重複を避けるためである。
当該TCES制度の目的において、投資先企業が不動産取引以外の通常の事業に従事しているものの、トレーディングの性質を持つ一回限りの投機的な不動産取引を行った場合、例外企業と見なされない。
さらに、投資先企業は、取得した不動産を売却する前に一定の改装や改修を行う場合があるが、これらの活動は「建設」及び「不動産開発」の定義には該当しない(「不動産開発」の項参照)。取得した不動産を販売目的で保有することは、不動産保有事業ではなく、不動産取引事業の一部と見なされる。
投資先企業が不動産取引事業に従事しているかどうかは、個々の案件の事実と状況によって判断が異なる。投資先企業が、関連する基準期間中に如何なる不動産取引も行っていないにもかかわらず、当該企業の不動産取引事業が依然として継続していることを示唆する状況の場合(例えば、特定の不動産をトレーディング目的の株式持分として維持している場合)、当該企業は、同期間中も不動産取引事業を行っているものと見なされる。
不動産取引事業に従事する投資先企業の非上場株式持分を、当該TCES制度から除外したとしても、そのような株式持分に関連するオンショア処分益が、利得税の課税対象となることを意味するものではない。オンショア処分益が利得税の課税対象となるか否かは、引続き「バッジ・オブ・トレード」分析に基づいて決定される
不動産開発
投資先企業が、関連する基準期間中もしくはそれ以前に、香港あるいはその他の地域で不動産開発に従事しているまたは従事していた場合、例外企業となる。不動産開発とは、建物もしくは建物の一部の建設あるいは建設を手配することを指し、関連する建設のために土地、建物または建物の一部の取得、並びに建設後の建物もしくは建物の一部の売却が含まれる。
「建設」の定義
「建設」とは、以下を指す:
- 建物もしくは建物の一部を建設する目的で、土地内、土地上、土地上または地下で行われる建築作業、あるいは解体及び再建作業; または
- 建物もしくは建物の一部の変更あるいは追加、または部分的な取壊し及び建替えは、
建築物条例(第123章)第14条(1)に基づく建築事務監督局の同意、または香港以外の地域で実施される場合は、その地域の同様の監督当局の同意が必要である。しかしながら、建設には、建物もしくは建物の一部の商業的価値を維持することを目的とした、または建物もしくは建物の一部の改装あるいは改修のための工事は含まれない。
不動産開発業者は、建設工事を開始する前に、不動産(土地や古い建物等)を取得する必要がある場合があり、開発完了後に開発済みの不動産を売却することがある。ただし、これらの活動は、同一の不動産の取得と売却を伴うものではないため、「不動産取引」には該当しない。不動産開発業者が保有する以下の不動産は:
- 開発保留中の取得済み不動産; 並びに
- 開発完了後の開発済みの不動産である場合、
不動産保有事業ではなく、不動産開発事業の一部を構成する。
「事業目的」の例外
投資先企業は、関連する処分前に少なくとも60ヶ月間継続して、不動産開発事業に従事しておらず、同企業が保有する不動産が取引もしくは事業(不動産賃貸業を目的として使用されている場合を含む)の運営に使用されており、かつ同企業が保有する不動産は売りに出されていない場合、例外企業ではない。
投資先企業が不動産開発事業に従事していたかどうかは、個々の案件の事実と状況によって判断される問題である。例えば、投資先企業がある土地上に不動産の建設を進める措置を講じた場合(例えば、その土地での建築工事を開始するために、屋宇署(Buildings Department)へ建築計画を提出した場合)、実際の建設工事が行われていない場合であっても、企業は不動産開発を行ったものとみなされる。逆に、投資先企業が開発された不動産に関して、建築事務監督局から発行された占有許可を取得し、その後如何なる開発プロジェクトにも参加していない場合、当該企業は通常、占有許可の発行日以降不動産開発事業を中止したものとみなされる。
開発中の物件
開発中の不動産を保有する投資先企業は、不動産開発事業に従事しているとみなされ、当該TCES制度の対象から除外される。
複合用途不動産の開発
不動産開発事業の例外は、企業体ベースで適用される。従って、投資先企業が、販売目的及び非販売目的の両方で開発した不動産を保有している場合(例えば、居住用アパートは販売されている一方、ショッピングモールや駐車場は賃貸されている場合)、当該企業が継続して60ヶ月間不動産開発事業に従事していない場合であっても、「事業目的」の例外は適用されない。
不動産保有
不動産保有事業には、不動産取引事業及び不動産開発事業の範囲に含まれる不動産事業以外の不動産を保有する事業が含まれる。
投資先企業が、関連する基準期間中に直接的または間接的に、香港もしくはその他の場所にある不動産を保有しており、当該基準期間における当該投資先企業の総資産に占める当該不動産の価値の比率が50%を超えている場合(以下「50%不動産保有基準」)、例外企業となる。しかしながら、特定の不動産が、当該不動産を直接保有する企業によって、自らの取引もしくは事業(不動産賃貸事業を含む)を営む目的で使用されているが、販売目的ではない場合には、当該不動産の価値は、関連する比率を決定する際に、分子から省かれる。
不動産の評価
投資先企業が保有する不動産の価値とは、以下の価値を合計した額を指す:
- 投資先企業が直接保有する不動産; 並びに
- 別の企業が保有する不動産に価値が帰属する範囲に限定し、投資先企業がその別の企業に対して保有する直接的もしくは間接的な受益権または議決権。
不動産の価額を計算するための直接的もしくは間接的な受益権または議決権の範囲を決定する際には、「密接な関係のある企業の意味」の項に記載の方法を参照することが可能である。
投資先企業の財務諸表もしくは不動産鑑定評価書に記載されている価値は、投資先企業の不動産保有が、不動産保有基準の50%を超えているかどうかを判断するために参照される。しかしながら、投資企業が当該TCES制度への参加を選択する目的で、基礎となる不動産の評価を取得することは必須ではない。これを選択した日における不動産の価値を証明する証拠を提出できる場合に限り、投資企業は基準期間の終了日または関連する株式持分の処分日を選択することができる。
不動産保有比率の計算
投資先企業の不動産保有額は、次の式に従って計算される-
AB × 100%
当該公式中: Aは、次の集合体を指す:
- 投資先企業の特定の不動産の価値;
- 別の企業が保有する不動産に価値が帰属する範囲に限定し、投資先企業がその別の企業に対して保有する直接的もしくは間接的な受益権または議決権の価値;
Bは、投資先企業の資産総額を指す;
企業に関する特定の不動産とは、香港もしくはその他の地域において、企業が取引または事業を行うために使用する不動産を除く、企業が直接保有する不動産を指す。
別の企業の特定の不動産に起因する、別の企業に対する直接的あるいは間接的な受益権または議決権の価値は、以下を乗算して得られる価値となる-
- 投資先企業が別の企業に対して保有する直接的もしくは間接的な受益権または議決権の範囲を比率; 及び
- 指定された不動産の値。
上記の計算式を適用して投資先企業の不動産保有額を計算する際に、以下の各項目(各々「特定項目の価額」という)は、
- 投資先企業もしくは別の企業に関連する特定の不動産の価値;
- 投資先企業の直接的もしくは間接的な受益権または議決権の価値;
- 投資先企業の総資産価値、
は次の式に従って計算される-
C + D2
当該公式中: Cは、投資先企業の関連する基準期間の開始時点における特定項目の価値を指す;
Dは、以下の特定の項目の価値を指す;
- 投資先企業の関連する基準期間の終了日; または
- 特定の処分の時期。
不動産賃貸業
「賃貸」とは、リースまたはライセンスのいずれの形式で付与されるかに関係なく、一定の対価を支払って、不動産を使用する権利を付与することを指すことを一般的に意図している。IRO第2条(1)に基づき、「事業」には、「法人による如何なる施設もしくはその一部の個人への貸与及び転貸、並びに政府以外の(政府賃貸借契約や約定を含まない)リースまたはテナントに基づいて所有する、施設あるいは施設の一部を個人が転貸すること」が含まれる。
ある企業が関連当事者へある不動産をリースし、その賃料が独立企業間ベースで設定されている場合、当該企業は、当該不動産を不動産賃貸業に使用していると見なされる可能性がある。
TCES制度のその他の特徴
申請手続き
当該TCES制度は、株式持分の処分が発生する基準期間における税査定年度の利得税申告書における必要な情報を提供することにより、書面での選択をすることで、投資企業に適用される。
申請しないことによる悪影響無し
当該TCES制度は、特定の利益もしくは損失の性質を決定するための、新しい一連の包括的なルールを確立することを目的とするものではない。言い換えると、当該TCES制度は純粋に納税者に代替案を提供するものであり、その対象とならないオンショア処分益については、引続き「バッジ・オブ・トレード」分析に基づいて、本質的に資本性であるか営業性であるかが判断される。
TCES制度の期限
当該TCES制度に有効期限は定められていない。
TCES制度の詳細情報
よくある質問
Onshore Gain on Disposal of Equity Interests – Tax Certainty Enhancement Scheme
実例
Example 1 – Application of equity holding conditions
原文:Onshore Gain on Disposal of Equity Interests – Tax Certainty Enhancement Scheme、2023年12月15日更新