総経理のための会計&IT入門

情報化時代の分業

今回はExcelを使った財務レポートのつくり方をご紹介しながら、情報化時代に適した分業の方法について考えてみたいと思います。

Excel のよい点として、セルの中に計算式を埋め込むことができるので、レイアウトとデータの計算を直感的に組み合わせた表を作成することができます。ところがより複雑な表をつくり込んでいくと、作成者にしか理解できないシステムが出来上がってしまい、会社のブラックボックスと化してしまうことがあります。また、ちょっとしたレイアウトの変更のために、計算式を全て変えなければなりません。皆さんの会社の財務レポート、予算レポートはこのようになっていませんか?

あらゆる情報システムは、データ部分、それを計算するプログラム、そして結果を表示させるレイアウト、の3層構造になっています。Accessでいえば、データ部分は「テーブル」、計算は「クエリ」、レイアウトは「レポート」で行われます。これをExcelに応用してみましょう。

まず、縦軸に財務諸表の科目、横軸に時間(月)を取ったシンプルなExcelシートをひとつ用意してフォーマットにします。このシートを3つコピーして、「予算」、「前年同期」、「当月」と名前をつけ、当月までの財務データを入力します。データを入力するのは基本的にここだけで、次の段階からは計算と表示結果の調整をしていきます。

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同様に、フォーマットを7つコピーして、「予算比」、「前年比」、「予算累計」、「前年累計」、「当月累計」、「累計予算比」、「累計前年比」と名前をつけ、先程入力した3つのデータシートのデータを使った計算式を入力して、差額と累計が表示されるようにします(詳しい計算式は省略します)。フォーマットを統一してありますので、一部のセルに計算式を入力した後、計算式をコピーしていけばOKです。

データはすべて整いました。シートをまたひとつ追加して、財務レポート用にきれいにつくったレイアウトを用意します。ここで、データを表示させるために「index関数」を使うことをおすすめします。index関数はデータの表示のための関数で、「=index(データ範囲,行位置,列位置)」のように使います。データのフォーマットはすべて同じですので、行位置と列位置には同じ数字が入り、データ範囲を変化させるだけで異なるシートからデータを引っ張ることができます。横軸(行)は時間ですので、行位置に「$a$1」などの代数を入れて、月ごとに変化させることもできますね(セル「a1」には表示したい月の数字を入れます)。

以上のようなExcelの使い方をヒントに情報システムの基本構造が理解できると、成果物として情報を作成するときの分業の方法が見えてきます。まず経営者にとって必要な情報をレイアウトとして提示します。次にその情報がオリジナルか、加工されたものか、を区別することで、データ入力とデータの計算を別々の担当者によって行うことができます。散在する情報にパターンを見付け出し、分業のかたちを整えることが、情報化時代の経営者の役割の一つになってきています。

(以上)


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