中国
[全訳] 中国企業会計凖則とIFRSのコンバージェンス・ロードマップ
中国企業会計凖則と国際財務報告基準のコンバージェンス全面的持続のためのロードマップ(公開草案)
(原文)
会計凖則の国際コンバージェンスは国家経済発展と経済グローバル化の一つの必然的な選択である。2005年以来、中国は国際財務報告基準と実質性コンバージェンスを有する企業会計凖則体系を構築し、新旧の転換と平穏で有効な実施を実現し、アジアと新興市場経済国家の前列にある。
今回の国際金融危機拡大後、20か国グループ(G20)首脳会議・金融安定理事会(FSB)はグローバルに統一した高品質な会計凖則の制定を提案し、会計凖則の問題にかつてなく高度に言及し、国際会計基準理事会(IASB)は一連の重要な措置をとり、各国会計凖則の国際コンバージェンスのペースを加速させた。こういった背景の下、積極的に行動を取り、国際形勢の最新の変化に対応する必要がある。
一、G20首脳会議とFSBの提議に呼応し、中国企業会計凖則と国際財務報告基準のコンバージェンス全面的持続のためのロードマップを制定する。
今回の国際金融危機に対応するため、2008年11月15日、G20ワシントン首脳会議は金融危機の原因について分析と総括を行い、金融危機の対策、及びIASB統治機構の改革とグローバルに統一した高品質の会計凖則を制定する目標を提出した。
2009年4月、G20ロンドン首脳会議は各国に積極的な協力を要請した。
2009年6月26日から27日まで、金融安定化フォーラム(FSF)が改編されてできたFSBがスイスのバーゼルで開かれ、運営委員会、及び金融システムの弱点の把握と報告、各国の当局との連携と対策実施、規制や監督の基準設定を担う3つの常任委員会の設置を決定した。中国財政部・中国人民銀行・中国銀監会はそれぞれそのメンバーであり、その中の基準設定委員会の業務の一つは各国の会計凖則の国際コンバージェンスを促進することである。
IASBはG20とFSBの要求に従い、金融危機で表面化した問題を検討し、及び完全な会計凖則によって管理監督機構と協力し解決するため、以下の行動を取る:
(1)2008年12月に成立した金融危機アドバイザリーグループは、2009年7月に報告を公表し、財務報告を改善し金融危機に対応する提案を行った。
(2)2009年5月28日に公正価値測定の公開草案を公表し、2010年上半期に最終凖則を公表する予定である。
(3)2009年7月14日に《金融商品会計凖則の複雑性低下》総合性項目の第一階段公開草案-《金融商品の分類と測定》を公表した。景気循環増幅性と貸付損失引当金の問題に対し、金融資産の減損を簡略化し、10月に第二階段の公開草案を公表する。ヘッジ会計を簡略化する問題について、12月に第三階段の公開草案を公表する。
(4)FSBとの協力を提議し、金融機構財務報告アドバイザリーグループを組織し、利益関係者との対話機構を高度化する。
FSBは各メンバー国が一連の重要な国際管理監督基準、例えば国際財務報告基準を遵守しているかどうか監督する。会計凖則の問題はすでに公衆の受託責任と政府を背景に備える重要な業務であり、会計専門領域の活動にとどまらない。G20首脳会議とFSBの提議に応え、本国の実情に合わせ、国際財務報告基準の重大な修正に参加するため、《中国企業会計凖則と国際財務報告基準のコンバージェンス全面的持続のためのロードマップ》を公表し、グローバルに統一した高品質な会計凖則の制定に向け努力する。
二、中国企業会計凖則はすでに国際財務報告基準と実質的なコンバージェンスを実現しており、コンバージェンスの全面的持続のための着実な基礎を固めている。
2005年初から年末まで、中国財政部は集中して国際財務報告基準にコンバージェンスした企業会計凖則体系(1項の基本凖則と38項の具体凖則から構成される)の制定を完了した。
この期間において、IASBは数回に渡り専門家を派遣し財政部会計司と共に業務を行い、2005年11月8日に中国企業会計凖則委員会と共同声明に署名した。
声明:過去一年間で、中国は《企業会計凖則-基本凖則》と具体凖則の公開草案を公表し、中国の企業会計凖則体系を構築し、国際財務報告基準とのコンバージェンスを実現した。双方は、中国企業会計凖則と国際財務報告基準に存在するごく少数の問題について、例えば資産減損の戻し入れ、関連会社関係及びその取引の開示において差異が存在する。双方は上述の差異を解消するよう業務を継続することに同意する。
同時に、IASBは中国の特殊な状況と環境におけるいくつかの会計上の問題、例えば関連会社取引の開示・公正価値測定と同一統制下の合併などについて認識した。こうした問題について、中国はIASBが高品質の国際財務報告基準解決策を追求することに対し非常に有用な補助を提供することができる。
2006年2月15日、中国財政部は企業会計凖則体系を正式に公表し、IASBのデビッド・トゥイーディー議長団は発表会に出席し高い評価を与えた。企業会計凖則体系は2007年1月1日よりすべての上場会社に実施している。中国財政部と証券監督管理委員会等の関係者は一致協力し、上場会社に対する会計凖則の実施状況の指導と監督を強化した。各関係者の努力を経て、中国企業会計凖則は実践の検査を通過した。財政部会計司は「時価評価・個別分析」の業務方式を採用し、すべての上場会社の開示する財務報告情報を分析し、中国上場会社の2007年における会計凖則の有効な実施状況の分析報告を公表し、英文版をIASB・世界銀行・EU等に提供した。
2009年上半期、財政部会計司は再度同様の方式により、中国上場会社の2008年企業会計凖則実施状況の分析報告を行った。分析結果によると、中国企業会計凖則は上場会社において安定かつ有効に実施されている。
2008年5月、IASBは専門家を派遣して中国上場会社の企業会計凖則実施状況について実地調査を行い、それぞれ上場会社・会計師事務所・証券会社・基金会社と座談会を開き、中国企業会計凖則体系の安定かつ有効な実施を再確認した。世界銀行も専門家を中国に派遣し調査を行い、中国企業会計凖則の有効な実施状況について高い評価を与え、「中国会計改革と発展」プロジェクトは世界銀行の長期低利貸付プロジェクト中最も成功した模範事例となった。
欧州委員会内部市場本部は中国企業会計凖則実施状況の評価をまとめ、中国企業会計凖則の実施状況は良好であると認めた。2008年12月12日、欧州委員会は第三国会計凖則同等性問題の規則を公表し、2009年から2011年までの過渡期において、中国企業がEU国内市場に参加する時に中国企業会計凖則により財務報告を作成することを認めた。
中国内地と香港は一年間に渡り両者の会計凖則(香港財務報告凖則は国際財務報告基準と同等)比較研究を経て、2007年12月6日に両地会計凖則同等性の共同声明に署名し、両地会計凖則は同等性を実現した。これにより内地企業が香港で上場し、資金調達コストを引き下げ、両地資本市場の共同発展を実現することができる。
上述の状況が示すとおり、中国企業会計凖則と国際財務報告基準はすでにコンバージェンスを実現しており、上場会社は有効に実施し、国内外に認められている。国際情勢の最新の変化に対応し、G20首脳会議とFSBの提議に応え、中国が会計凖則の面で解決が必要な主要問題はコンバージェンスの全面的持続であり、グローバルに統一した高品質の会計凖則を構築するためにしかるべき貢献を行っていく。
三、中国企業会計凖則と国際財務報告基準のコンバージェンス全面的持続のためのロードマップの主要項目とタイムスケジュール
グローバルに統一した高品質の会計凖則の制定は一つの重大なシステム構築である。長期に渡り、IASBはこのためにたゆまぬ努力を重ね、成功と進展を勝ち取ってきた。特に今回の国際金融危機への対応とG20・FSBの要求を実現するための対策は、充分な肯定と賞賛に値する。中国はこれまで通りIASBの業務を支持し、同時に、新興市場経済国家に特有の法律・経済・文化環境があり、グローバルに統一した高品質の会計凖則の制定には国家の経済環境発展を基礎とするにとどまらず、新興市場経済国家の実情を充分に考慮しなければならない。
(一)IASBが行う凖則の重大な修正プロジェクトに積極的に参加し、グローバルに統一した高品質な会計凖則が新興市場経済国家の実情を充分に考慮するよう促す。
中国会計凖則委員会とIASBはすでに持続的コンバージェンス業務機構を構築し、毎年少なくとも二回の技術会談を招集し、会計凖則の実施状況と国際財務報告基準の将来の発展を分析する。実際にこの機構は実務的に十分有効である。中国は会計凖則コンバージェンスの全面的持続を実現するため、IASBが今回の国際金融危機に対応するための金融商品・公正価値測定・財務諸表の表示等の項目の修正業務に積極的に参加する。
中国財政部は積極的に提唱して成立したアジア・オセアニア基準設定主体グループ(AOSSG)も主に上述の目的のためであり、国際財務報告基準にできるだけ中国等新興市場国家経済の実情を考慮してもらうことに意義がある。
中国はIASBによる《国際会計基準第39号-金融商品:認識と測定》(IAS 39)簡略化の修正を支持し、7月14日に公表した第一階段公開草案《金融商品の分類と測定》は、金融商品の区分を償却原価と公正価値測定の2大分類とする計画を基本的に了承した。但し、もし公正価値測定の範囲が拡大した場合、中国は新興市場経済国家として憂慮を表明する。中国は、基本的な貸付金の特徴を備え契約収益を基礎として管理される金融資産または金融負債は、償却原価による測定はより意思決定有用性を備える情報であると考える。
中国は財務諸表にその他包括利益を組み入れることに賛成する。但し現在の財務諸表の内部構成と表示項目を大幅に変更すべきではない。現在の財務諸表の表示構成と項目は実務的な応用が良好であるため、大きな構成上の調整の必要はなく、表示に重大な修正を行うとなると、法律上もいくつかの障害が存在する。
(二)中国企業会計凖則と国際財務報告基準の現存するわずかな差異を積極的に解消する。
4年間の討論を経て、IASBは最終的に2009年8月4日《国際会計基準第24号-関連会社開示》(IAS24)の修正を正式に比準した。修正後のIAS24は中国の実情を考慮し、この問題における中国企業会計凖則と国際財務報告基準の間の差異を解消した。企業再編資産評価の会計処理もまた中国特有の問題であり、財政部は幾度もIASBに解決計画を要請している。
2009年8月26日、IASBはその年度の改善項目で《国際財務報告基準第1号-国際財務報告基準の初年度適用》の改訂を通じて、この問題の修正を承諾した。IASBが中国の新興市場経済国家としての状況を考慮する努力は実務的に有効である。
中国の企業合併凖則は同一支配下の企業合併と非同一支配下の企業合併の会計処理を規定している。国際財務報告基準は非同一支配下の企業合併の会計処理方法をパーチェス法と規定しているだけで、同一支配下の企業合併の会計処理を規定していない。IASBが2005年に中国と署名した共同声明において示したように、中国企業会計凖則はこの方面での規定と実践を国際財務報告基準の参考として提供し、IASBが早急にこの項目を作成することを希望する。
国際財務報告基準では企業が計上した固定資産・無形資産等非流動資産の減損引当金を当期損益に戻し入れることが認められている。中国の資産減値凖則の規定では、こうした資産の減損を一度認識した場合、戻し入れることはできない。IASBは中国の規定に対して理解を表明し、我々が米国財務会計凖則委員会(FASB)とIASBの資産減値凖則におけるコンバージェンスの進展に関心を持ち、共同して研究しこの問題を解決することを希望している。
(三)中国企業会計凖則と国際財務報告基準のコンバージェンスの全面的持続のためのタイムスケジュール。
IASBは2011年に金融商品・収入・財務諸表表示等重大な項目の修正を完了する予定であり、中国企業会計凖則と国際財務報告基準のコンバージェンスの全面的持続のための完成時期もまた2011年を予定している。2010-2011年は中国企業会計凖則と国際財務報告基準のコンバージェンスの全面的持続にとって重要な時期であり、財政部は2010年より凖則体系の改訂業務を開始し、2011年に完成するよう努め、2012年よりすべての大中型企業で実施することを予定している。
改訂後の中国企業会計凖則体系は依然として基本凖則・具体凖則・応用指南の三部構成となる。基本凖則は変更を行わない。具体凖則は調整補充を行う。現行の凖則応用指南は具体凖則の一部に属し、関連する具体凖則と一体である。《企業会計凖則講解》は名称を指南と改め、内容と解釈を調整・補充し、企業がコンバージェンスの全面的持続後の企業会計凖則体系をより良く理解し実施できるようにする。
2011年以降、中国企業会計凖則と国際財務報告基準は安定時期に入り、実務上発生した新しい取引または事項について、コンバージェンス全面的持続機構を通じて解決する。