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[まとめ] 貿易取引に係る外貨と税務6-貨物輸入時の関税
前回まで、中国現地法人の貨物輸出入やサービス取引等に係る外貨管理や税務規定を整理致しましたが、今回は中国現地法人の国外取引で発生し得る税務の具体的な問題事例を紹介します。
■ 技術使用費(ロイヤリティ)に係る関税
親会社の製品生産技術を使用する対価として技術使用費を支払う行為は、多くの中国現地法人で実施されています。技術使用費に関係する税金としては、増値税、企業所得税、及び国外からの支援者に係る個人所得税等が想定されますが、税関当局より関税の課税を指示される可能性もあります。
(1)課税根拠
税関総署の規定では、貨物輸入者(現地法人)が貨物輸出者に対して技術使用費を支払う場合、一定の条件下では当該技術使用費も輸入貨物代金として関税を課すことが定められている。
技術使用費に関税が課される条件:
- 輸入貨物と関連する技術使用費である
- 輸入貨物を中国国内で販売する条件として技術使用費支払が義務付けられている
上述の両条件に合致する場合、技術使用費に対しても貨物輸入として関税を課されることになる。
- 輸出入貨物との関連性
- 中国国内販売の条件
輸入貨物の関連する技術使用費の定義としては、輸入する貨物に当初から対象の特許や固有技術が含まれている、或いは特許や固有技術を利用して国外で製造された貨物である、とされている。技術使用費として支払われる固有技術が、輸入時点で貨物に含まれていると判断される場合には、技術使用費に対しても輸入貨物と看做される。
技術使用費支払が貨物輸入や中国国内販売活動を行う場合の義務とされる状況に対しては、中国国内販売の条件が附加される。
(2)現地法人の対応
- 契約書の締結内容
- 技術使用費の算定
技術使用契約は、輸入材料購入とは区分して契約を締結することで、技術使用費と輸入行為の混在を疑われないことが重要である。また、提供される生産技術についても、現地法人での生産加工過程における技術のみを対象技術として、輸入原材料に当初から含まれる特許や固有技術には触れないよう留意する。
技術使用費の計算方法として、提供される技術を利用して生産した製品売上高に一定の料率を乗じて算出される事例も見られる。但し、技術提供者から輸入する原材料を以って製品を生産する場合、第三者への販売金額には当該原材料費用も含まれてしまうため、技術に対して負担する技術使用費の原則からは、技術使用費の算定基数から輸入原材料費を除くことが望ましいと考える。
(3)第三者への技術使用費支払
貨物輸出者と技術使用費支払先が異なる場合においても、当該技術使用費に関税が課される可能性もある。課税根拠は、上記の税関規定と同様であるが、現地法人が負担する技術使用費の対象が、当該貨物の輸入以前に附加されており、技術使用費を国外の第三者へ支払わなければ輸入貨物の購入や中国国内販売が難しい状況に置かれる場合には、上記条件に合致するとして、貨物貿易取引とは直接に関係しない国外第三者への技術使用費も関税が課される。
【関税算出における基数】
中国の輸入関税額は、輸入貨物金額に関税率を乗じて計算することが原則ですが、上述の技術使用費(ロイヤリティ)のように、直接に貨物費用として支払う金額ではない費用も関税の対象となります。
関税価格に含める諸費用:
- 購入者が負担する貨物購入手数料以外の手数料や仲介費
- 購入者が負担する完税価格査定審査時に当該貨物と一体と看做される容器費用
- 購入者が負担する梱包材料や梱包役務費用
- 当該貨物の生産や中華人民共和国内での販売に関連して、無償、或いは原価を下回る金額で購入者が提供する、適当な比率での配賦が可能な部品や工具、金型、消耗材料、及び類似貨物の価額、並びに国外での開発や設計等関連役務費用
- 中華人民共和国内で販売されることが条件の当該貨物に対して、購入者が支払う必要のある当該貨物に関連する特許権使用料
- 当該貨物輸入後の転売や処分、使用により販売者が購入者より得る収益
また、関税の課税価格はCIF価額を以って計算することが定められているため、FOB方式での輸入契約となっている場合には、貨物価額に対して上記6種類の調整項目と合わせて、中国輸入までの運送費や保険料を加算しなければなりません。
関税課税価額計算で控除が認められる諸費用:
- 工場建築物、機械や設備等の貨物輸入後に執行される建設、据付や組立、保守、及び技術役務の費用
- 輸入貨物の国内入国地点における積卸後の運送や関連費用、保険料
- 輸入関税と国内税金
上記費用が現地法人からの貨物代金支払額に含まれている場合には、発生実費を控除して関税計算を行うことが認められる。上記の内容を総合すると、関税の課税価格(中国語:完税価額)の公式は以下のようになります。
完税価額=輸入CIF価格(国外運賃や保険料を含む)+上記調整項目(加算項目6種類/減算項目3種類)
税関業務は専門性が高いため、社内の通関担当者や外部の通関業者へ任せてしまうことが多くありますが、課税関係が複雑で現地法人全体の状況を把握していない場合には、誤った申告等が行なわれることもあるため、管理体制を定期的に見直されることをお勧め致します。