中国 企業所得税

[全訳] 「中国・非居住者企業の役務提供に対する企業所得税に関する公告」の解釈

「非居住者企業の派遣人員の中国国内における役務提供に対する企業所得税課税に係る問題に関する公告」についての解釈

【公布期日】:2013年5月6日  【出所】:国家税務総局弁公庁

《国家税務総局による非居住者企業の派遣人員の中国国内における役務提供に対する企業所得税課税に係る問題に関する公告》(以下「公告」という)は、企業所得税法の関連規定に基づき、非居住者企業の派遣人員の役務提供が機構・場所を構成し、企業所得税の納税義務が発生する等の問題の明確化を主旨としている。税務機関及び納税者の公告の理解・把握に資するため、公布背景及び主要内容について以下の通りに解釈する。

一、公布背景

2008年1月1日に新企業所得税法が施行されて以来、各地方の税務機関の国際税務部門は非居住者企業所得税に対する管理の強化を進め、政策の理解や実施状況は標準化されつつある。非居住者企業が関連企業を主とする中国国内企業に対して当該国内企業の高級管理職やその他の技術職を担当する人員を派遣し、かつ国内企業が非居住者企業に対して派遣人員の給与・管理費等を支払っている場合、当該非居住者企業が中国国内での機構・場所を有するか否かの判定が困難であるという問題が近年、一部の下級税務機関から提起されている。外国企業が投資している国内企業においてはこのような派遣方式は広く採用されている一方、企業所得税法及び同実施条例、関連通達は原則的な規定を定めているのみである。下級税務機関、納税者及び税務処理代行機構は税務総局に公告を通じての当該問題の明確化を求めており、税務総局のオンライン窓口にも少なくない数の納税者から当該問題に関する問い合わせが寄せられている。
この問題を技術的に解決して税法の執行から不公正さと不確定性を排除し、かつ実施可能な管理規則を定めるため、派遣・費用支払方式等について大規模な調査研究を実施し、公告の初稿に対して税務機関、納税者及び税務処理代行機構から意見を募った。合理的な意見や提案を採用して数多くの修正を加え、1年あまりの期間を経て最終稿を完成させた。
非居住者企業の派遣人員の役務提供に係る課税問題の複雑さは、派遣人員、国内企業及び国外企業の間における管理や責任の分担状況、費用の性質等が明確にされてない点に起因しており、とりわけ派遣人員が国内企業において高級管理職を担任している場合は上記の事項の判定は困難である。派遣行為の影響は企業所得税、営業税及び個人所得税に及ぶ。企業所得税の角度からは租税条約の相手国の居住者(すなわち中国における非居住者)の納税義務の有無が問題となるが、これを判定するには機構・場所の構成の有無だけでなく、恒久的施設の構成の有無を判定する必要がある。規定としての適切性及び実施可能性を担保するために、公告は主に企業所得税法及び租税条約の角度から機構・場所及び恒久的施設の判定基準、考慮すべき要素、関連管理手順を明確にしている。その他の税目や租税条約上の問題については関連規定に従う、もしくは別途規定を公布することとした。

二、解決すべき主な問題

非居住者企業の派遣人員の役務提供に係る納税義務の判定で難しいのは、派遣人員の業務性質の判断である。これは一般に派遣人員が非居住者企業との雇用関係を解除しないまま派遣され、国内企業において管理・技術等の業務に従事するためである。派遣期間中、派遣人員は非居住者企業の従業員として非居住者企業に役務を提供しているのか、もしくは国内企業の従業員として国内企業に役務を提供しているのかについては、税務機関と企業の間に大きく見解が異なる。仮に前者であれば、非居住者企業は国内に機構・場所を有することになる。すなわち、派遣人員が非居住者企業の従業員として非居住者企業のために働いているか否かの具体的な判定基準が、当該問題解決の鍵となる。公告では業務の結果に係る責任及びリスクの負担、業績評価等の判定要件を規定した。
また派遣行為の非居住者登記申告手順への組み入れ、非居住者による請負工事及び役務提供に関する規定(国家税務総局令第19号を参照)、非居住者に係る企業所得税の推定、対外支払時の税務証明の発行に関する規定等の整合性の確保も、公告を通じた解決が求められていた問題であった。

三、主な内容

まず、非居住者企業の派遣人員による国内での役務提供について、2つの視点から機構・場所となる判定要素を明確にする。第一に派遣人員の業務の結果の責任及びリスクを誰が負っているかにより、派遣人員が従事している業務の性質は実質的に派遣企業に関連しているか、それとも国内企業に関連しているかを判定することとした。これは基本的な判定基準であり、原則的にも理論的にも恒久的施設の判定基準と一致する。第二に5つの考慮すべき要素を列挙し、費用支払の状況から派遣企業が費用回収を通じて中国源泉所得を得ているかを判定し、第一の判定を補強することとした。これらの5項目の多くは並立しており、いずれか1つにでも該当すれば、第一の基本的な判定基準と合わせて、機構・場所及び恒久的施設が認定される。注意を要するのは、もし派遣人員の給与の全額について中国において個人所得税を納付する場合、派遣企業が費用の一部または全てを負担するとしても、派遣企業が給与・賞与を負担して、もしくは派遣行為を通じて所得を得るという状況が存在しないため、機構・場所及び恒久的施設は構成されないとした点である。
次に、派遣行為を通常の租税管理の範囲に組み入れ、企業所得税法及び国家税務総局令第19号に基づいて登記申告や資料提出を行い、実際の状況に基づき申告を行う旨を定めた。申告を行うことができない場合には推定課税を行う。
その他、税務機関が派遣行為を審査する内容と方法について、具体的な指針を規定した。派遣人員の役務提供行為に係る企業所得税と関連する個人所得税・営業税等の処理には、情報収集や国家・地方税務機関間の連絡が求められる。公告では資料提供及び国家・地方税務機関間の連絡への協力に関する規定も設けた。

四、理解及び執行上の注意点

(一) 恒久的施設認定に関する問題。派遣企業が中国と租税条約を締結している国家・地区の居住者であり、中国国内において機構・場所を有すると判定された場合、租税条約の優遇規定の適用に当たっては租税条約の実施規定の関連内容と手順に従う(租税条約に依拠した恒久的施設の判定、関連登記手続等)。機構・場所は構成されるが恒久的施設に該当しない場合、機構・場所に係る所得については中国において納税義務を負わない。公告は国内において固定的な職務を担当する期間が6ヶ月を超える派遣人員を想定しているため、そのような特殊な場合には機構・場所と恒久的施設の概念を厳格に区分した上で相応の理由及び資料を提出し、当該状況を証明する。公告が想定する派遣モデルの下では当該状況は例外的である。
(二) 派遣行為に係る対外支払いについては、非居住者企業、支払者及び税務機関は税務総局が公布した対外支払時の税務証明の発行に関する規定に従う。国内機構及び個人が提出した対外支払申請書の記入内容や添付資料に不備がなければ、税務期間は直ちに税務証明を発行する必要がある。納税義務の判定が困難である等の理由で正常な対外支払行為を遅延させたり、阻害したりしてはならない。
(三) 公告施行前に発生したが税務処理が行われていない場合(関連費用の未払、申告納税の未了等)、当公告の規定に基づいて再度判定を行い、条件に該当する場合、登記、申告納税及び税務管理を行う。