中国 中国会計税務レポ
中国・小企業内部統制制度 – 概要
小企業の内部統制の構築および効果的な実施を推進し、経営管理レベルとリスク防止能力を向上させ、小企業の健全で持続可能な発展を促進するためとして「小企業内部統制規範(試行)」(財会[2017]21号。)が2017年6月に制定され、2018年1月1日から施行されました。今回は中国における企業の内部統制の概要を紹介します。
1. 中国における企業の内部統制制度
中国では、企業の内部統制を強化および規範化し、企業の管理経営レベルおよびリスク防止能力を向上させ、企業の持続的発展を促進し、社会主義市場経済秩序および社会公衆の利益を維持・保護するためとして、2008年に「企業内部統制基本規範」(財会[2008]7号。2009年7月1日施行。以下C-SOX法※1という)が公布されました。2011年4月にはC-SOX法運用のガイドラインとして「企業内部統制に関する指針」(財会[2010]11号。以下「ガイドライン」という。※2)も制定されています。なお、現時点では非上場の大中型企業※3にはC-SOX法の適用は義務付けられてはいませんが、早期の実現が推奨されています※4。なお、保険会社や商業銀行には別途規定があります。
※1 China‐SOX法。アメリカで2002年に不正会計問題やコンプライアンスの欠如などに対処するため、企業会計の信頼性を高め、内部統制を強化することを目的に企業経営者の責務と罰則を定めた「SOX法」に倣って整備された企業会計改革法の中国版。米国の法律起案者2名(Sarbanes氏、Oxley氏)ちなんでSOX法と呼ばれている。
※2 企業内部統制応用指針、企業内部統制評価指針、企業内部統制監査指針の3つのガイドラインで構成されている。
※3 「国民経済行業分類(GB/T4754-2011)」の業種ごとに、従業員数、営業収入、資産総額等の指標に基づき、大・中・小・零細(中国語表記は微小)型に区分されます(「統計上大中小零細型企業区分弁法」(国統字[2011]75号附表)。例えば、工業は従業員数300人以上かつ営業収入200万元以上、卸売業は従業員20人以上かつ営業収入5000万元以上、建築業は営業収入6000万元以上かつ資産総額5000万元以上が大中型に該当する。
※4 2011年1月1日より、国内と国外で同時に上場している企業から適用が開始され、2012年からは上海と深センの証券取引所のメインボード上場企業、その後中小ボード、創業ボードに適用を広げるものとされている。なお、小企業及びその他組織も本規範を参照して内部統制を構築・実施することができるとして内部統治制度の確立を推奨している。
2. 企業内部統制基本規範
C-SOX法では、内部統制とは、企業の董事会、幹事会、経営者層および全従業員が実施する統制目的を実現するためのプロセスと定義しています。内部統制の目的は、企業の経営管理のコンプライアンス、資産の保全、財務報告および関連情報の真実性および完全性を合理的に保証し、経営効率と効果を向上させ、発展戦略の実現を促進することであるとしています。企業が有効な内部統制を構築・実施するために
- 内部環境
- リスク評価
- 統制活動
- 情報の収集伝達
- 状況のモニタリング
が求められています。
企業は、企業の内部統制制度を制定し、実施し、その内部統制の有効性について自ら評価を行い、さらに会計師事務所による内部統制監査を受けて適正である意見表明を取得しなければなりません。C-SOX法は、そのガイドラインを含め、内部統制の統制活動に関して詳細に規定されており、不正防止に重点に置いていることがうかがえます。
3. 小企業内部統制規範
小企業内部統制規範は、小企業にも一定のコーポレートガバナンス、内部統制管理能力を求めるもので、適用対象は、中国に設立された小企業でC-SOX法およびガイドラインの適用対象となる企業およびその企業グループに帰属するもの以外となります。なお、零細企業(中国語表記は「微型企業」)も、当該規範を参照とすることが推奨されています。
内部統制の定義は、小企業の責任者および職員全体が共同で実施する、統制目的を実現するためのプロセスとされ、その目的は、小企業の経営管理のコンプライアンス、資金資産の保全および財務報告情報の真実・完全・信頼性を合理的に保証することとされており、C-SOX法を踏襲しています。