中国 中国・香港労務

[中国労務] 労務派遣契約ほか、各種雇用形式について

2013年7月1日より修正施行された労働契約法での労務派遣契約を含め、中国における企業の各種雇用形式について説明する。

1.労務派遣

1-1労務派遣に関わる三者の関係と義務

中国において企業が労務派遣会社を起用して派遣従業員を受け入れる時、労務派遣会社との間で労務派遣服務協議を締結し、企業と労務派遣服務機構はそれぞれ使用者、雇用者という立場で労働契約法他の関連法律に基づき派遣従業員への責任を負う。

[契約関係]
  企業(使用者)-労務派遣服務機構(雇用者)間は「労務派遣服務協議」による民事関係
  労務派遣服務機構-派遣従業員(労働者)間は「労働契約」による労働関係
 労務派遣会社は、派遣従業員と2年以上の労働契約を締結し、労働契約期間中派遣業務
がない場合当地の最低賃金に基づき月毎に給与を支給しなければならない。また1回のみの試用期間が認められる。
一方、企業と労務派遣服務機構が締結する労務派遣服務協議には、派遣職位や人数、派
遣期限、労働報酬や社会保険費用額とその支払方法、協議違反条項といった内容を含ま
なければならず、労務派遣服務機構は労働者にこれらの内容を告知しなければならない。

[同一労働同一賃金]
企業は、派遣従業員に対し自社の同類職位の従業員と同一、或は所在地の同類職位の労
働報酬制度を実行しなければならず、派遣服務協議にも派遣従業員の労働報酬がこの規
定に沿っていることを明記しなければならない。
 
[労務派遣の3つの性質要件]
労務派遣は正規雇用を補充する形式として、採用する職位には次の3つの性質を備えなければならない。
臨時性:存続期間が6ヶ月を超えない職位でなければならない
補助性:主要業務を補助する業務性質の職位でなければならない
代替性:社外学習期間、休暇期間中、一時的に別の従業員が代替する
企業は2013年7月1日修正労働契約法の施行以降、上記要件に合わない派遣契約に関しては、契約期間満了時に派遣契約を直接雇用に変更しなければならない場合が出てくる。

[企業の労務派遣使用比率規定]
企業の労務派遣比率は雇用総数の一定比率を超えてはならないとされている。この点、2013年8月7日時点で公開意見募集中の労務派遣若干規定では、一定比率について、補助性職位の派遣従業員数が雇用総数の10%を超えてはならないとドラフトされている。
上記の同一労働同一賃金、3つの性質要件、労務派遣使用比率は企業の負うべき義務であり、これらを含む労務派遣規定を違反し且つ指示期限内に改善しない場合、企業の罰金は派遣従業員1人当たり5,000元から10,000元である。

なお、外国企業常駐代表処での従業員の雇用は必ず外国企業労務服務公司(FESCO)との派遣服務協議を締結しなければならず、上記3つの性質及び一定比率の制限を受けない。

[労務派遣服務機構の資格要件]
*労務派遣服務機構の経営資格要件は以下の通りである。
資本金200万元
労働行政部門より労務派遣業務の行政認可を受け《労務派遣経営許可証》を有する。
業務に相応しい固定の経営場所を有し、法律法規に沿った労務派遣管理制度を整備し
ている。
企業は労務派遣会社の起用時、関連のライセンスを確認し、毎年年度検査に合格した
かどうかを確認することが望ましい。
  労務派遣服務機構は、派遣服務協議に約定する通りに派遣従業員へ給与(ボーナス、
手当を含み)を支払い、派遣従業員から費用を徴収したり、搾取したりしてはならな
い。また、企業(使用者)は労働者から費用を徴収してはならない。

[企業-使用者としてのその他の義務]
上記のほか、使用者としての企業の負うべき義務は以下の通り規定されている。
 (1)勤務時間規定、労働保護規定は正社員と同じように確保しなければならない。
(2)派遣服務協議に定める仕事の要求と労働報酬を派遣従業員に告知する。
(3)残業代と人事考課ボーナスを支払い、勤務職位に関わる福利待遇を提供する。
(4)派遣従業員に対し必要な研修を行う。
 (5)継続して使用する場合、正常な給与調整制度を実行しなければならない。

1-2企業による契約解除について
 労働契約法に定める雇用者の解除可能な条件(同法第39条及び第40条の第1項と第2項の場合)において、企業は派遣従業員を派遣会社に返還することができ、労務派遣会社は労働者との労働契約を解除できるとされている。

2.パートタイム(非全日制)

  パートタイム従業員の雇用については労働契約法に若干の規定がある。
  -パートタイム雇用は、時間当たりの報酬計算を主とし、同一企業では一般的に毎日の
勤務時間が4時間を超えず、毎週の勤務時間が24時間を超えない勤務形式である。
(第68条)
- パートタイム雇用はその当事者双方が口頭で契約を協議することができる。
  – パートタイム従業員は1社或は複数の雇用者と労働契約を締結することができる。
但し、後に締結した労働契約は先に契約した労働契約の履行に影響してはならない。
(第69条)
  – 試用期間を定めてはならない。(第70条)
  – いずれの一方も雇用の終了を相手に通知することができ、企業は終了に当たり、経済
補償金の支払いは不要である。(第71条)
  – パートタイム雇用の時間給は、企業の所在地人民政府の規定する最低時間給賃金標準
を下回ってはならない。また、支払い周期は最長15日を超えてはならない。(第72条)

3.インターンシップ(実習生)

 企業が在学中の学生を受け入れるインターンシップは中国でも見受けられる。実習は中国の労働契約法が適用される労働関係ではなく、企業にとって社会保険の加入義務は無い。

4.退職年齢に達した社員

  退職年齢に達した人を雇用する場合がある。退職年齢(男性60歳、女性50歳或は女性幹部55歳)に達した人に対し、勤務条件に応じて労働契約か或は労務協議を締結する。
 退職年齢に達しているため、社会保険は加入する必要が無い。但し、怪我等の対応のため民間の傷害保険等を付保する場合が多い。労働契約ならば給与支払い、労務契約ならば労務報酬として支払うことになる。
 

5.給与の支払い

 企業が従業員と直接労働契約を締結する場合、企業は雇用者として、従業員へ給与を支払い、個人所得税の源泉徴収及び社会保険納付等を行う。
一方、労務派遣を起用する場合、企業は労務派遣費用を含めた人件費総額を労務派遣会社へ支払い、労務派遣会社より派遣従業員へ給与支払い、個人所得税源泉徴収納付、社会保険納付を行う。

6.労務契約(協議)と労務報酬

 パートタイムや退職年齢に達した人の雇用時、労働契約ではなく労務契約(労務協議)を締結し、給与ではなく労務報酬として支払う場合がある。労務契約とは会社と個人の間に労働契約法に基づく労働関係はなく、個人が独立して会社に労務を提供することにより報酬を得る契約である。労務報酬の個人所得税計算は給与の場合とは異なるため、留意する必要がある。

*本文は2013年8月に作成されたものです。規定の変更、各地の運用については現地にて再度ご確認いただく必要がある点をご了承ください。