中国 中国事業再構築入門
中国における事業再構築入門第6回(資金調達2)
今回は、次回に引き続き、中国国内における日系現地法人の資金調達スキームについて取り上げます。
中国においては、人民元に関する総量規制や外貨規制等、資金調達に関して様々な制約があり、日本本社の思い通りにいかないケースが多々あります。また、当局への申請手続および審査において、一定の期間を要するため、ある程度ゆとりをもった資金計画を策定しておくことがポイントとなってきます。
日系現地法人の資金調達スキームとしては、(1)グループ内金融(2)増資(3)外部借入(4)その他に分類できます。表1参考。今回はグループ内金融の一つである親子ローンについて解説します。
(1) 親子ローンとは
親子ローンとは、中国における日系現地法人が親会社から直接融資を受ける方法であり、最もよく行われている資金調達スキームです。基本的には、親会社が調達した外貨(日本円・米ドル・香港ドル等)を現地法人に融資することになります。ただし、親子ローンには限度額があり、「投注差」の範囲内でのみ認められています。
※ 投注差とは
中国においては、外資企業を設立する際、「総投資額」と「登録資本金」を登記する必要があります。登記された「総投資額」と「登録資本金」の差額が「投注差」となります。ここで、「総投資額」とは事業に要する運転資金と設備資金の総和、「登録資本金」とは親会社からの実際の払込額であり、過少資本を防止するため、「総投資額」に応じて「登録資本金」の最低比率が設定されています。なお、「総投資額」と「登録資本金」は、批准証書に記載されていますのでチェックしてみてください。
(2) 親子ローンのメリット・デメリット
① メリット
増資と比較すると手続期間が短く機動的かつ柔軟な資金調達が可能。
返済条件を比較的自由に設定することが可能。
グループ内で資金調達するため、中国国内で直接融資を受けるよりも低金利。
② デメリット
「投注差」の範囲内でしか認められておらず、融資限度額あり。
長期借入の場合、「投注差」限度額が費消される。
人民元換金時の手続に時間を要する場合あり。
(3) 親子ローン手続き
親子ローンを実施するためには、外貨債務として外貨管理局の許可が必要であり、親子ローン契約締結後15日以内に外貨登記の手続を行わなければなりません。また、上海の場合、外貨管理局における外債審査の際、通常20営業日以上を要するので時間的余裕をもって手続きを行う必要があります。
さらに、融資を受けた外貨を人民元に転換する際および元本返済・利息支払の際の手続きですが、従来は外貨管理局の許可が必要でした。しかし、これに関しては2013年5月より緩和され、基本的には銀行審査のみで可能となっています。
表1 日系現地法人の資金調達スキーム
グループ内金融 | 親子ローン |
---|---|
委託貸付 | |
増資 | 親会社からの増資(第三者からも可能) |
外部借入 | 日系現地金融機関からの直接融資 |
ローカル金融機関からの直接融資 | |
その他 | セールス&リースバック |
ファクタリング |
表2 親子ローンに関する手続きの流れ
1. 親子ローン契約調印
↓(契約締結後15日以内に外債登記)
2. 外債登記・外債口座開設申請(外貨管理局)
↓(所要日数:20日間)
3. 外債登記証の発行 (外貨管理局)
↓
4. 外債口座開設
↓(所要日数:7日間)
5. 親子ローン送金実行、外債口座への入金