
シンガポール
ビザ・就労関連
シンガポール就労ビザ認定制度(COMPASS制度)について
シンガポールでの就労ビザ(Employment Pass、以下EP)の申請に際しては、2023年9月1日よりポイント制度「COMPASS(Complementarity Assessment Framework)」が導入されております。
Step1:まず、申請者(候補者)の職種や年齢に応じて、MOMが認定した最低給与基準を満たす必要があります。
最低給与額S$5,000(金融セクターはS$5,500)。なお、2025年1月1日から、$5,600(金融セクターは$6,200)に引き上げられます。
Step2:申請者の個人属性と雇用主の企業属性に基づき、各申請者において、それぞれ合計40ポイント以上を獲得することが求められます。
目次
COMPASSの評価基準
COMPASSは以下の4つの主要な評価項目(各20ポイント満点)と、該当する場合に加算されるボーナス項目で構成されています。
1. 給与(Salary)
申請者の月額固定給与が、業界ごとのローカル従業員(シンガポール人とシンガポール永住権者)PMET(現時点では、月S$3,150以上の給与の専門職、管理職、技術職)の給与ベンチマークと比較されます。上位90%以上であれば20ポイント、65%以上90%未満であれば10ポイントが付与されます。
2. 学歴(Qualifications)
申請者の学歴に応じてポイントが付与されます。MOMが指定するトップレベルの教育機関の学位を持つ場合は20ポイント、それ以外の学位や(学位相当の)専門資格の場合は10ポイントが付与されます。
日本の大学では、東京大学、京都大学、東北大学、大阪大学、東京工業大学(新、東京科学大学)が、20ポイントの対象とされています。
現行の大学リストは、以下をご参照ください。
List of top-tier institutions under COMPASS Criterion 2 (Qualifications)
3. 多様性(Diversity)
企業内の従業員のPMETのうち、同国籍のPMETに占める割合に基づき評価されます。申請者の国籍が企業内で5%未満の場合は20ポイント、5%以上25%未満の場合は10ポイントが付与されます。ただし、企業全体のPMETが25名未満の場合、自動的に10ポイントが付与されます。
4. ローカル人材の雇用支援(Support for Local Employment)
企業内の従業員のPMETのうちローカル従業員PMETの占める割合が、同業界内で上位50%以上であれば20ポイント、上位50%未満80%以上であれば10ポイントが付与されます。こちらも、企業全体のPMETが25名未満の場合、自動的に10ポイントが付与されます。
ボーナス項目
以下の条件を満たす場合、追加でポイントが付与されます。
- スキルボーナス(Skills Bonus): シンガポール国内で不足しているスキルや職業に該当する場合、20ポイントが付与されます。
- 戦略的経済優先事項への貢献(Strategic Economic Priorities Bonus): 政府機関と共同で推進されるプロジェクトへの関与や、国際的な組織を目指す企業の場合、10ポイントが付与されます。
COMPASSの適用除外
以下の条件に該当する場合、COMPASSの適用が除外されます。
- 月額固定給与がS$22,500以上の場合
- 企業内の海外異動(Intra-Corporate Transferee)としてのEP申請
- 1か月以下の短期業務のためのEP申請
COMPASSの詳細や最新情報については、シンガポール人材開発省(MOM)の公式ウェブサイトをご参照ください。
シンガポール就労ビザTier1、COMPASS制度における大学ランキングの変化について
早慶(MBA)のランクイン、その意味と今後の動向
シンガポールの就労ビザTier1、COMPASS制度において、これまで東京大学、京都大学、東北大学、東京工業大学、大阪大学といった旧帝大が20点獲得できる大学として位置づけられてきましたが、ここに早稲田大学と慶應義塾大学のMBA(修士)が加わったことは、大きな変化と言えるでしょう。慶応義塾大学(Business Administration (for MBAs – master’s degrees))、早稲田大学(Business Administration (for MBAs – master’s degrees))が追加されると発表されました。
大学リスト「List of institutions awarded 20 points under COMPASS Criterion 2(Qualifications)」
この変化が意味するもの
- グローバルな評価基準の変化: シンガポールのCOMPASS制度が、単に日本の旧帝大のみに焦点を当てた評価ではなく、国際的に認められたビジネススクールであるMBAプログラムの質も評価対象としてきたことを示唆しています。
- 日本の私大の国際的な評価向上: 早慶のMBAプログラムが、シンガポールの厳格な評価基準をクリアしたことは、これらのプログラムの質の高さを国際的に証明するものであり、日本の私立大学の国際的な評価向上に寄与するでしょう。
- 多様化する人材ニーズ: シンガポールが、従来の学歴だけでなく、実務経験や専門的なスキルを重視する人材を求めていることを示しています。MBAプログラムは、理論と実践を結びつけ、即戦力となる人材を育成する点で、このニーズに合致していると考えられます。
シンガポール政府は、経済情勢や人材ニーズの変化に合わせて、COMPASS制度の評価基準を今後も見直していくとしています。
(注)本記事の発行日以降、最新の制度と異なっている可能性がありますので、最新の制度をご確認ください。
■当社サービスのご紹介
弊社グループでは、複数名がEAライセンスを保持しており、お客様の案件に、EAライセンス保持者が直接サポートさせていただいております(法人EA登録番号No. 13C6394)。
日系の会計事務所では30年来の老舗の当社では、長らく就労ビザに関する包括的なワンストップサービスを提供し、クライアントの皆さまがスムーズかつ安心して手続きを進められるようサポートいたします。
万一、MOMから申請が却下された場合には、当社がアドバイスを行い、MOMとのやりとりを直接対応しております。
弊社の提供サービスは、以下のとおりですが、その他にもサポートをしておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。
【EP申請サポート及び代行サービス】
- 会社の売上情報の更新
- 求人広告の掲載(広告掲載義務の免除に該当しない場合)
- 就労ビザ申請の提出
- 就労ビザの発行
- 就労ビザカード登録のための予約手配
- MOMからの就労ビザカード受取までのフォロー
【扶養家族ビザ(DP)及び長期滞在パス(LTVP)の申請サポート】
- 日本大使館との連携による婚姻証明書・出生証明書の取得代行
- 保健促進庁(HPB)との連携による予防接種登録フォームの手続、および、12歳以下の外国出生児童の予防接種証明書(Verification of Immunisation Certificate)の取得
- 日本のクリニックと連携し、予防接種記録を英語およびHPB指定フォーマットに翻訳
必要に応じて、日本人スタッフが日本語でのサポートを行い、円滑かつ明確なコミュニケーションを進めております。
【ビザ更新サポート】
- MOMへの個人情報(パスポート情報、連絡先、住所など)の更新サポート
- 将来の更新手続において、必要最低限の情報のご提供のみで済むようよう配慮いたします。
錦戸 傑宜(Nishikido Takanobu) / AVIC NAC PTE LTD
シンガポールにて、シンガポールとマレーシアの日系企業のASEAN進出および事業展開支援に特化したサービスを提供しています。日本の公認会計士として、大手監査法人での監査経験、12年以上のスタートアップのCFOや経営管理・財務責任者の経験を有し、また、EC、Fintech、IoT/AI、エネルギー、創薬など、幅広い業界での実務経験を有しています。日本での実務経験とシンガポールでの実務知識を組み合わせ、現地法人設立から、会計・税務対応、内部統制構築、資金調達、その他オペレーション上のご相談対応まで、包括的なビジネスサポートを行っています。特に、日本とシンガポールの商習慣や制度の違いを熟知し、両国の架け橋となることで、クライアントの円滑な海外展開を支援しています。
あわせて読みたいSEE ALSO


シンガポール進出時の留意点(4) – GSTの登録

シンガポール進出時の留意点(3) – 支払手続(シンガポールでの支払慣習)

シンガポール進出時の留意点(2) – 記帳業務

シンガポール進出時の留意点(1) – 給与関連
