中国
[全訳] クロスボーダー貿易人民元決済試行管理弁法の質疑応答
中国人民銀行の関係責任者による
《クロスボーダー貿易人民元決済試行管理弁法》の関連問題に関する記者質疑応答(原文)
発布日:2009年7月2日
1、質問:今回《クロスボーダー貿易人民元決済試行管理弁法》を公布した背景は何か。
回答:現在、世界金融危機の影響で、米ドル、ユーロ等の主要な決済通貨の為替レートが大きく変動している。我が国とその周辺国家、また周辺地区の企業は、第三国の通貨で貿易決済を行う場合、比較的大きな為替変動リスクを負うことになる。同時に、我が国と、アセアン国家及び大陸と香港マカオ地区の貿易や投資、人々の往来の急速な発展に伴い、人民元による決済の要請が高まっている。世界金融危機の影響が拡がりつつあるなかで、国内外の市場や企業の要請に応じ、我が国と周辺国家及び地区における貿易の正常な成長を維持し、さらなる利便性を企業に提供するため、国務院が、2009年4月8日、上海市、広東省の広州市、深セン市、珠海市、東莞市において、クロスボーダー貿易人民元決済の試行を決定し、香港マカオ地区及びアセアンを暫定的に域外地域範囲とし、人民銀行が関連部門と共同に速やかに《クロスボーダー人民元決済試行管理弁法》(以下《弁法》とする)を定めることを求めたものである。
2、質問:試行管理の指導コンセプトは何か。
回答:試行管理の指導コンセプトは、リスクコントロールが保証できることを前提に、できるだけ国際慣例に基づいて《弁法》を定め、制度上の障害を少なくし、適切な利便性を提供し、貿易の真実性における審査を厳格化し、総量規制を行いながら、クロスボーダー人民元決済試行を緩やかに進めることである。
試行過程で、人民銀行は、現在有するマネーロンダリング防止及び人民元預金口座管理制度を通じて、商業銀行及び試行企業に対し、監督管理を強化する一方で、人民元クロスボーダー収支情報管理システムを確立し、クロスボーダー貿易人民元決済に関連する各種情報を収集して長期保存し、人民元クロスボーダー収支に対して統計、分析、監督を行う。
3、質問:試行地区をどのように確定するか。
回答:2008年、上海市と広東省は、相前後して、所在地においてクロスボーダー貿易人民元決済試行の実施要望を国務院に提出した。上海市と広東省は、企業の選択及び政策の方面における準備が比較的十分であったため、国務院は上海市、広東省の広州市、深セン市、珠海市、東莞市におけるクロスボーダー人民元決済試行をまず許可した。また、域外の試行地区として、香港マカオ地区及びアセアン国家と暫定的に明確にした。
4、質問:試行企業をどのように選定するか。
回答:《弁法》の要求に基づき、試行地区を管轄する省人民政府は、所在地の関係部門と協力してクロスボーダー貿易人民元決済の試行企業を推薦する責任があり、その後人民銀行が財政部、商務部、税関総署、税務総局、銀監会等の関連部門と共同に審査を行い、国際決済の業務経験が豊富で、財政、商務、税関及び外貨管理の関連規定を遵守し、信用が良好な企業を試行企業として選定する。なお、試行企業は事実どおり登録し、真実性をもって出資し、所在地において実態としての営業場所を有し、クロスボーダー貿易人民元決済の具体的規定を遵守しなくてはならない。
5、質問:試行企業が人民元でクロスボーダー決済を行う際、輸出による税還付を受けられるか。企業が税関の通関及び輸出による税還付を行う際、どの規定を遵守すべきか。
回答:関連規定に基づき、人民元決済を使用する輸出貿易は税還付(免税)政策を受ける。試行企業人民元決済によりクロスボーダー貿易の通関及び輸出貨物の税還付(免税)を行う際は、外貨核銷単の提供が不要である。輸出貨物の税還付(免税)管理弁法の具体的な内容は国務院税務主管部門が制定する。
国家の関連規定を違反する試行企業については、法に基づいて処罰し、試行資格を取り消す。試行企業によるクロスボーダー貿易人民元決済規定からの違反情報については、関係部門共用の人民元クロスボーダー収支情報管理システム及び人民銀行の企業信用情報基礎データベースに登録する。
6、質問:試行企業がクロスボーダー人民元決済業務を行う際、どのような具体的規定を遵守すべきであるか。
回答:試行企業が行うクロスボーダー貿易人民元決済の真実性を確保するため、クロスボーダー人民元決済の台帳を作成し、輸出入に係る通関情報及び人民元資金の収支情況を正確に記録しなくてはならない。
クロスボーダー貿易人民元決済に関する国際収支取引について、試行企業が関連規定に基づいて国際収支統計申告を行わなくてはならない。
7、質問:どのような条件を満たす域内商業銀行がクロスボーダー人民元決済サービスを提供できるか。
回答:域内において国際決済能力を有し、試行企業が口座開設または域外商業銀行のノストロ・アカウントを開設できる域内商業銀行は、試行企業にクロスボーダー貿易人民元決済サービスを提供することができる。試行の初期においては、準備の状況に差異があるため、即時にクロスボーダー貿易人民元決済サービスを提供できない情況もありえる
8、質問:域内決済銀行とは何か。どのような業務を提供できるか。その職責は何か。
回答:域内において国際決済能力を有し、試行企業が口座を開設できる銀行を「域内決済銀行」という。域内決済銀行は、人民元貿易決済の関連規定に基づき、試行企業にクロスボーダー人民元決済サービスを提供しなければならない。主要な規定は以下を含む。
①人民銀行の規定に基づき、取引証憑の真実性及び人民元収支の一致性について合理的な審査を行う。域内決済銀行が、マネーロンダリング防止に関する規定に従って有効な措置を講じ、取引先及びその取引目的と性質をつかみ、更に取引先を実際に支配する自然人と取引の実際の受益者を知り、取引先の資料と取引記録を適切に保存し、各取引の具体的な情況を再現することを確保しなければならない。
②人民元クロスボーダー貿易決済に係わる国際収支取引について、関連規定に基づき、国際収支統計申告を行う。外債統計監督の関連規定に従って、人民元クロスボーダー貿易に係わる居民が非居民に対する負債については外債登記を実施するが、外債管理の対象とはしない。
③人民銀行の関連要求に基づいて、人民元クロスボーダー収支情報管理システムに接続して人民クロスボーダー収支情報を報告送付する。
9、質問:域内代理銀行とは何か。域内代理銀行の業務範囲と職責は何か。
回答:域内代理銀行とは、域外商業銀行(即ち域外参加銀行である)に人民元ノストロ・アカウントを開設する域内商業銀行を指す。域内代理銀行は域内決済銀行として、試行企業に人民元決済サービスを提供することができる。
域内代理銀行は域外参加銀行と人民元代理決済協議を締結し、人民元ノストロ・アカウントを開設し、域外参加銀行を代理してクロスボーダー貿易人民元決済を行うことができる。域内代理銀行は口座を開設する域外参加銀行に対し、最低保証資金を設定することができ、域外参加銀行に最低保証資金の換金サービスを提供することができる。域内代理銀行は域外参加銀行の要請によって限定額内で人民元を売買することができるが、その限定額は人民銀行が確定する。域内代理銀行はノストロ・アカウントを開設した域外参加銀行に人民元口座の融資サービスを提供することができ、臨時の資金需要に対応することができるが、その融資限定額及び期限は人民銀行が確定する。
域内代理銀行は人民元貿易決済の関連規定を遵守しなくてはならない。その主
要規定の内容は以下を含む。
①規定に基づいて人民元代理決済協議及び人民元ノストロ・アカウントについて、中国人民銀行の所在地分枝機構に報告しなくてはならない。
②マネーロンダリング防止及び反テロ融資の規定に基づき、有効な措置を講じ、取引先及び取引目的と性質をつかみ、更に取引先を実際に支配する自然人と取引の実際の受益者を知り、取引先の資料と取引記録を適切に保存し、各取引の具体的な情況を再現することを確保しなければならない。
③人民元売買業務を行う際、関連規定に基づいて人民元売買統計を行わなくてはならない。
④人民元クロスボーダー貿易決済に係わる国際収支取引につき、関連規定に基づいて国際収支統計申告を行う。外債統計監督の関連規定に従って人民元クロスボーダー貿易に係わる居民が非居民に対する負債については外債登記を実施するが、外債管理の対象とはしない。
⑤人民銀行の関連要求に基づいて、人民元クロスボーダー収支情報管理システムに接続して人民クロスボーダー収支情報を報告送付する。
10、質問:商業銀行はどのようにクロスボーダー決済を行うか。どのような決済方法があるか。
回答:商業銀行はクロスボーダー人民元決済を行う際、二つの方法から選択することができる。一つ目は香港マカオ地区の人民元業務清算銀行を通じて人民元のクロスボーダー決済と清算を行う。二つ目は域内商業銀行が域外銀行を代理して、人民元資金のクロスボーダー決済と清算を行う。
人民銀行と香港マカオ金融管理局の認可を得て、人民銀行の大口決済システムに加入し、香港マカオの人民元清算業務を行う商業銀行を、香港マカオの人民元清算銀行(以下、清算銀行という)とする。現在、香港の人民元清算銀行は中国銀行(香港)有限公司であり、マカオの人民元清算銀行は中国銀行(マカオ)有限公司である。
11、質問:クロスボーダー人民元決済試行を開始した後、香港マカオ人民元清算銀行はどのように変化するか。
回答:香港マカオの人民元取引が開始して以来、預金、換金、送金、銀行カード、人民元小切手、人民元債権等の業務が行われている。クロスボーダー貿易人民元決済試行の施行は、清算銀行の清算業務範囲を拡大する。清算銀行は国務院の許可を得て試行対象である域外の国家及び地区(例えば香港マカオ地区及びアセアン国家)に、クロスボーダー人民元決済及び清算サービスを提供することができる。
人民銀行は《弁法》に基づき、清算銀行と人民元業務の清算協議を締結し直し、香港マカオ人民元清算銀行が提供するクロスボーダー貿易人民元決済と清算サービスの関連内容を明確化する。香港マカオ人民元清算銀行は、人民銀行の関連規定に従って域内銀行のインターバンク外貨市場、インターバンク市場にて人民元換金及び資金の短期融資を行うことができる。
12、質問:域外企業の人民元資金が不足した際、人民元貿易融資を容易に受けられるか。
回答:域内清算銀行は、域外企業の人民元資金が不足した際、関連規定に基づいて人民元融資サービスを逐次提供することができる。
13、質問:試行企業は人民元資金を国外で保有できるか。
回答:企業の実際需要を応じて、試行企業は輸出による人民元収入を国外で保有することができるが、域内清算銀行を通じて所在地のある人民銀行の分枝機構に報告しなくてはならない。
試行企業は、貨物の輸出後210日までに人民元代金を域内において回収していない場合、5営業日内に国内清算銀行を通じて、当該貨物の未回収金額に対応する輸出通関単番号を人民元クロスボーダー収支情報管理システムへ報告して、且つ関連資料を当該域内清算銀行に提出しなくてはならない。
試行企業は、クロスボーダー人民元決済の主要報告銀行としてひとつの域内清算銀行を選定し、主要報告銀行は、関連情報の報告及び提出義務の履行について試行企業に喚起する責任がある。
14、質問:クロスボーダー人民元決済を推進するため、人民銀行と香港・マカオ金融管理局とは、どのような協力体制があるか。
回答:内地と香港マカオにおいて清算ルートを通じて行うクロスボーダー人民元決済の試行を成功させるため、人民銀行は香港金融管理局、マカオ金融管理局と共同で覚書に署名し、それぞれ監督管理の責任範囲を明確化して、香港マカオ銀行が行うクロスボーダー人民元決済及精算の監督管理につき、相互に協力する。
人民銀行責任者・周小川氏と、香港金融管理局総裁・任志鋼氏は、2009年6月29日、補足の共同の覚書に署名した。一方、マカオのクロスボーダー人民元決済の試行においては、その進捗状況により、マカオ金融管理局との関連覚書に署名する予定である。
15、質問:試行期間の法律執行検査の具体的規定は何か。
回答:人民銀行は、試行期間にわたって域内決済銀行、域内代理銀行、試行企業のクロスボーダー人民元決済業務の情況について検査、監督を行う。関連規定に違反した上記銀行及び試行企業については、法律に基づいて処罰する。また、人民銀行は、財政部、商務部、税関総署、税務総局、中国銀監会、外貨局等の関連部門と共同して情報共有及び管理規制を行い、事後検査を強化し、クロスボーダー人民元決済試験に対し有効な監督管理を実現する。