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お金の管理
[お金の管理] (5)債権管理
日系企業にとって、海外の子会社と日本の子会社との間で管理上決定的に異なる点があるとすれば、それは外貨を扱う点ではないでしょうか?ほとん どの日本の会社は円建て取引のみですが、海外子会社ともなると複数の通貨建て取引があることが通常です。そのため債権管理を行う上でも、日本で使用してい た社内管理用資料がそのまま使えないため、各社独自で複数通貨建てでも対応できるように工夫しているのが現状だと思います。
そこで今回は、複数通貨建ての債権管理を行う上でのポイントを説明したいと思います。
まず債権管理とは、①各得意先別に、②その月の売上高、③その月の入金額、④その月末の債権残高、を把握するための管理です。売上高は会社にとって存在意義そのものとも言うことができますし、実際に入金がないと大事な商品やサービスをタダであげたのと同じですので、この管理が会社にとって非常に重要になるのは一目瞭然かと思います。
具体的には、得意先別に表1のような得意先元帳を作成することになります。
(表1:4月度)
表1はこの4月に新しく事業を始めたという前提ですので、4月度では売上しか計上されていません。1~3までの売上があったのみで、入金はゼロ、従って売上金額がそのまま債権残高になっているという非常に分かりやすい例です。
まずこの基本イメージを理解して、5月度のものを見てみましょう。
(表2:5月度)
実は5月度にはいろいろなケースが含まれています。それぞれ個別に見ていきましょう。
(1)入金消し込み
1と2の売上については、5月中に入金があったので入金情報に記入します。その際に、日付と入金銀行を記入しておくと、該当するバンクステイトメントが簡単に見つかります。一方、預金出納帳の方では「X社:#2007040001」というように、得意先名と該当するインボイスナンバーを記入しておけば、得意先元帳と預金出納帳で相互に消し込みが確認できますので、管理はより正確になります。
(2)4月に計上が漏れていた売上があった場合
7の売上は4月20日付けの出荷(同日請求)ですので、本来であれば4月度の管理表に入れておかなければならないものでしたが、4月度を締め切って記帳も終わり本社へも報告が終わった後に分かったものでした。このような場合にはいくつか方法がありますが、一番簡単なのは既に締め切った4月分は一切いじらず、まだ締め切っていない月分として処理することです。月次でみれば正確ではありませんが、既に記帳や報告した数字を後から簡単に変えられるということになると、どれが最終版か分からなくなったり本社に正確な情報が伝わらなくなったりするなど多々悪影響もあるため、「締め切った月分はもう変更しない」とルールを決めた方が望ましいと思います。
(3)売上返品等のキャンセルがあった場合
3の売上は返品されたため、売上も取り消さなければなりません。このような場合、6のように取り消しが分かった時点で売上取り消しを記入します。同月内であれば何も記入しないということでも構いませんが、4月分を締め切った後であれば(2)と同じ理由で「締め切った月分はもう変更しない」とルールを決めた方が望ましいと思います。また、入金情報にも対応する取引番号を記載して取り消しの情報を記入することになります。
そして複数通貨建ての債権管理のポイントなのですが、「取引通貨建て」で①各得意先別に、②その月の売上高、③その月の入金額、④その月末の債権残高、を管理するということに尽きます。表を見ればお分かりですよね?
ところが、日本で作成した得意先元帳を応用したばかりに、記帳レートや銀行レートでその都度換算した後の金額で作成している例も多いのです。このやり方ですと、実際の取引通貨建ての債権額は別途集計しなければならないので非効率ですし、手間がかかる割にそもそも本来の債権管理の目的の達成が難しくなっています。
これまで6回に渡り経理のポイントを解説してきましたが、「お金の管理」について少しでも参考にしていただける点がございましたら筆者として喜ばしい限りです。
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